顔料と化学物質管理

  • URLをコピーしました!
目次

顔料とは?

色素の分類

色素の分類

アゾ系顔料の分類

アゾ系顔料の分類

アゾ系顔料の製造方法

アゾ系顔料の製造方法

シアニン系顔料の分類

シアニン系顔料の分類

シアニン系顔料の製造方法

シアニン系顔料の製造方法

複合酸化物系顔料の分類

C.I.Name濃色淡色組成
PY53Ti-Sb-Ni
PBr24Ti-Sb-Cr
PBr48Ti-Fe-Al
PBr33Fe-Zn-Cr
PG50Ti-Co-Ni-Zn
PB28Co-Al
PB36Co-Al-Cr
PBk28Cu-Cr-Mn
PBr29Fe-Cr
 

複合酸化物系顔料の製造方法

複合酸化物系顔料の製造方法

顔料の表示方法

 
C.I. No.Colour Index Constitution Number化学構造別分類番号(5桁数字)
C.I. NameColour Index Generic Name色別分類番号(10色+整理番号)
 
顔料一般名C.I. No.C.I. Name省略表示
カーボンブラック77266Pigment Black 7PBk7
酸化チタン77891Pigment White 6PW6
ジスアゾイエローAAA21090Pigment Yellow 12PY12
ブリリアントカーミン6B15850:1Pigment Red 57:1PR57:1
フタロシアニンブルー(β型)74160Pigment Blue 15:3PB15:3

※色別分類番号で使用する10色
  Yellow・Orange・Red・Violet・Blue・Green・Brown・Black・White・Metal

化学物質調査に必要な考え方

顔料に関わる化学法規制の動向

ハザードベース管理からリスクベース管理へ

  • リスク=有害性(ハザード)×環境排出量(曝露量)
  • 工業技術的・経済的に可能なレベル(BATレベル)

主成分から不純物へ

  • 分析技術の向上:未知の不純物が顔料中から検出
  • 第一種特定化学物質(化審法):HCB、PCBの取り扱い
  • カーボンブラック中の多環芳香族炭化水素(PAH)
  • アゾ系顔料中の特定芳香族アミン(PAA)

顔料に関わる化学物質管理の実務

安全データシート(SDS)の理解

  • 安衛法、化管法、毒劇法
  • GHS分類について

chemSHERPAの理解

  • 化審法(第一種特定化学物質)
  • TSCA第6条対象物質
  • ELV指令
  • RoHS指令
  • EU POPs規則
  • REACH 認可対象候補物質(SVHC)、ANNEX XIV(認可対象物質)
  • REACH AnnexXVII(制限対象物質)
  • 医療機器規則(MDR) Annex I
  • GADSL
  • IEC62474/JIG

化学物質管理の実務として重要な考え方

化学物質管理の閾値は、原則0.1%

  • SDS、SVHC、GADSLなど
  • 0.1%未満の不純物→個別に調査が必要

不使用か?非含有か?

  • 顔料において不純物の非含有を保証することは不可能
  • 含有経路は多種多様→非意図的な副生、設備からのコンタミ
  • 非含有証明をするなら閾値が必要

リスクベースの管理

  • 製品中に対象の化学物質を意図的に使用していないこと
  • 不純物として含有する場合でもリスクが十分低いこと
  • 技術的見地より閾値以上混入、副生しないこと
    • →不使用保証での回答

SDSについて

JIS改正

JIS Z 7252:2019及びJIS Z 7253:2019

  • JIS Z 7252:GHSに基づく化学品の分類方法
  • JIS Z 7253:GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法
    ラベル,作業場内の表示及び安全データシート(SDS)
  • 暫定措置として、2022年(令和4年)5月24日までは、JIS Z 7253:2012に従ってSDSを作成してもよいことになっていた。

改正内容

  • 国連GHS文書改訂6版に準拠
  • 危険有害性項目名の変更
     例:水生環境有害性(長期間)→水生環境有害性 長期(慢性)など
  • 危険有害性項目の追加
     例:鈍性化爆発物
  • 分類結果における表現方法の変更
     例:分類対象外、区分外→区分に該当しない

各危険有害性クラスに対するSDSを作成する濃度

各危険有害性クラスに対するSDSを作成する濃度
危険有害性クラスSDSを作成する濃度
急性毒性1.0%以上
皮膚腐食性/刺激性1.0%以上
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性1.0%以上
呼吸器感作性又は皮膚感作性0.1%以上
生殖細胞変異原性:区分10.1%以上
生殖細胞変異原性:区分21.0%以上
発がん性0.1%以上
生殖毒性0.1%以上
特定標的臓器毒性(単回ばく露)1.0%以上
特定標的臓器毒性(反復ばく露)1.0%以上
誤えん有害性:区分110%以上かつ動粘性率20.5mm2/s(40℃)
水生環境有害性1.0%以上

SDS三法

  • 労働安全衛生法(安衛法)
  • 化学物質排出把握管理促進法(化管法)
  • 毒物及び劇物取締法(毒劇法)

労働安全衛生法(安衛法)

法目的

 職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境形成を目的とした法律である。

法改正履歴(抜粋)

政令

「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令」(令和4年政令第51号)

  • 請負人の労働者の労働災害を防止するため注文者が必要な措置を講じなければならない設備の範囲の拡大
  • 職長等に対する安全衛生教育が必要となる業種の拡大
  • 名称等の表示・通知をしなければならない化学物質の追加(234物質)

○省令

「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令」(令和4年省令第91号)

  • 1-1. ラベル表示・SDS等による通知の義務対象物質の追加(234物質)
  • 1-2. リスクアセスメント対象物に関する事業者の義務(局所排気装置、呼吸用保護具)
  • 1-3. 皮膚等障害化学物質等への直接接触の防止(障害等防止用保護具の使用)
  • 1-4. 衛生委員会の付議事項の追加(化学物質の自律的な管理の実施状況の調査審議)
  • 1-5. がん等の遅発性疾病の把握強化(医師の意見、業務起因性判断について報告)
  • 1-6. リスクアセスメント結果等に関する記録の作成と保存(労働者周知、記録3年保存)
  • 1-7. 労働災害発生事業場への労働基準監督署長による指示(化学物質管理改善の指示)
  • 1-8. リスクアセスメント対象物に関する事業者の義務(健康診断等、記録5年保存)
  • 2-1. 化学物質管理者の選任の義務化(業種・規模要件無し)
  • 2-2. 保護具着用管理責任者の選任の義務化
  • 2-3. 雇い入れ時等教育の拡充(危険有害性化学物質の製造・取扱い⇒安全衛生教育)
  • 2-4. 職長等に対する安全衛生教育が必要となる業種の拡大(食料品製造業、印刷関連)
  • 3-1. SDS等による通知方法の柔軟化(承諾得ずに記録媒体、電子メール等で通知可能)
  • 3-2. SDS等の「人体に及ぼす作用」の定期確認と更新(5年以内毎に変更の要否確認)
  • 3-3. SDS等による通知事項の追加と含有量表示の適正化(用途の使用上注意、wt%)
  • 3-4. 化学物質を事業場内で別容器等で保管する際の措置の強化(移し替え、自製造物)
  • 3-5. 注文者が必要な措置を講じなければならない設備の範囲の拡大(通知対象物設備)
  • 4. 化学物質管理の水準が一定以上の事業場の個別規制の適用除外(自律的な管理へ)
  • 5. ばく露の程度が低い場合における健康診断の実施頻度の緩和(6月以内⇒1年以内へ)
  • 6. 作業環境測定結果が第3管理区分の事業場に対する措置の強化(呼吸用保護具徹底化)

「労働安全衛生規則及び特定化学物質障害予防規則の一部を改正する省令」(令和4年厚生労働省令第25号)

  • 名称等の表示・通知をしなければならない化学物質として新たな対象となる234物質について当該化学物質を含有する製剤その他の物に係る裾切値を設定

表示対象物質・通知対象物質

表示対象物質・通知対象物質(顔料関係抜粋)
アンチモン及びその化合物結晶質シリカ
カドミウム及びその化合物すず及びその化合物
カーボンブラックセレン及びその化合物
クロム及びその化合物銅及びその化合物
コバルト及びその化合物鉛及びその無機化合物
酸化亜鉛ニッケル及びその化合物
酸化アルミニウムマンガン及びその無機化合物
酸化チタン (IV)モリブデン及びその化合物
酸化鉄ロジン

 ここで注意すべきは、マンガン及びその無機化合物である。酸化マンガンを構造中に含む複合酸化物系顔料(PBk28、PBk26など)は対象となるが、ウォッチングレッド(PR48:4)のような有機顔料は対象とならない。

特定化学物質障害予防規則(特化則)

 化学物質による労働者のがん、皮膚炎、神経障害その他の健康障害を予防することを目的とした規則である。

特定化学物質

  • 第1類物質:がん等の慢性障害を引き起こす物質のうち、特に有害性が高く製造工程で特に厳重な管理(製造許可)を必要とするもの
  • 第2類物質:がん等の慢性障害を引き起こす物質のうち、第1類物質に該当しないもの
  • 第3類物質:大量漏えいにより急性中毒を引き起こすもの

※特別管理物質:第1類物質と第2類物質のうち、がん原性物質またはその疑いのある物質

 名称、注意事項などの掲示の実施や、空気中濃度の測定結果、労働者の作業状況や健康診断記録等を30年間保存することが求められている。

特化則上の複合酸化物系顔料の取り扱い

「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令」(平成29年政令第60号)

 三酸化二アンチモンが特定化学物質の「管理第2類物質」と「特別管理物質」に指定されたが、複合酸化物系顔料中の酸化アンチモンは「五酸化二アンチモン」であるため、対象除外と考えられる。

「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の施行等について」(令和2年4月22日基発0422第4号)

 従来まで「マンガン及びその化合物(塩基性酸化マンガンを除く。)」とされていたが、本改正によって「塩基性酸化マンガンを除く」の部分が削除されたため、酸化マンガンを含有する複合酸化物顔料は、特化物(第2類)の対象となった。

特化物 第2類物質(顔料関係抜粋)
特別管理物質ニッケル化合物(ニッケルカルボニルを除く、粉状のものに限る)
コバルト及びその無機化合物
オルト-トルイジン、など
カドミウム及びその化合物
マンガン及びその化合物 (塩基性酸化マンガンを除く)

1%を超えて含有する場合に対象となる。
酸化マンガンを含有する複合酸化物顔料は、法改正により特化物対象となった。

アゾ系顔料に関係する特化物(オルト-トルイジン)

労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び特定化学物質障害予防規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行について(基発1130第4号、平成28年11月30日)

 平成27年に化学工場で複数の労働者(退職者含む)が膀胱がんを発症していることが明らかになり、同事業場に対する災害調査において、労働者がo-トルイジンに経気道のみならず経皮からもばく露していたと示唆された。
 これら一連の調査結果をもとに施行令、規則の一部を改正し、特定化学物質の第2類物質として、o-トルイジン及びこれを含有する製剤等が追加されることとなった。これらは平成29年1月1日から施行される。
 o-トルイジンはジスアゾエロー(PY14)の中間体原料として使用されており、顔料と関連が深い。顔料メーカー各社はこの報告を重く受け止め、早いうちからo-トルイジンの残留調査を開始しているが、規制対象となるような残留量は確認されておらず、健康障害リスクは低いと報告されている。

安衛法の既存化学物質について

1. 政令で定める既存化学物質 (労働安全衛生法施行令第18条の3)

(1)元素、(2)天然に産出される化学物質、(3)放射性物質、
(4)昭和54年6月29日までに製造され、又は輸入された化学物質
 ※化審法における官報公示整理番号が以下に示す番号以前のもの
 (1)-1197、(2)-3166、(3)-3535、(4)-1365、(5)-5363、(6)-1553、(7)-2117、 (8)-652、(9)-2607

2. 名称を公表した新規化学物質 (労働安全衛生法第57条の3第3項)

新規化学物質の届出等を受けて厚生労働大臣が官報で名称等を公表した化学物質

3. 既存化学物質扱いとなる特定の化学物質 (基発第132号 S54.03.23)

既存化学物質のみから構成される特定の化合物等 (分子間化合物、ブロック重合物及びグラフト重合物など)

化学物質排出把握管理促進法(化管法)

法目的

 平成11年7月13日に制定され事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的とした法律である。
 PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)制度とは、化学物質の発生から排出までを把握し、集計し、公表する仕組みである。
 第一種指定化学物質を製造したり使用したりしている事業者は、環境への排出量を大気、水域、土壌に分け、かつ産業廃棄物処理業者に委託して処分している量を届け出る必要がある。また、第一種指定化学物質、第二種指定化学物質に該当する場合は、安全データシート(SDS)により、情報の提供をする必要がある。
 第一種、第二種指定化学物質は1%以上、特定第一種指定化学物質は0.1%以上含有している場合に届出の対象となる。

法改正履歴(抜粋)

「化学物質排出把握管理促進法施行令の一部を改正する政令」(令和3年10月20日公布)

 PRTR制度とSDS制度の対象となる第一種指定化学物質及びSDS制度のみの対象となる第二種指定化学物質が見直された。

  • 第一種指定化学物質:462物質→515物質(うち特定第一種指定化学物質:15物質→23物質 )
  • 第二種指定化学物質:100物質→134物質

(1)化管法の政令改正に伴う指定化学物質の切り替えの流れ

 令和5年4月1日からPRTR制度及びSDS制度の指定化学物質を切り替え

(2)改正政令の公布日以降のSDSの記載・提供について

 サプライチェーンの上流の事業者は、下流の事業者に可能な限り早期にSDSを提供

※本政令改正から指定化学物質固有の管理番号が導入された。

指定化学物質

指定化学物質(顔料関係抜粋)
特定第一種指定化学物質鉛化合物ニッケル化合物
第一種指定化学物質アンチモン及びその化合物
カドミウム及びその化合物
クロム及び三価クロム化合物
コバルト及びその化合物
セレン及びその化合物
バナジウム化合物
マンガン及びその化合物
モリブデン及びその化合物

毒物及び劇物取締法(毒劇法)

法目的

 1950年に制定されたもので、毒物及び劇物について、保健衛生上の見地から必要な取締を行うことを目的とした法律である。
 劇物を取り扱う場合には、劇物の容器に「医薬用外」の文字と白地に赤色の「劇物」の文字を表示する必要がある。
 また、それらの名称、成分及びその含有量の表示が義務付けられているほか、SDSの添付も義務付けられている。

法改正履歴(抜粋)

毒物及び劇物指定令の一部改正について(薬生発0624第1号 令和2年6月24日)

酸化コバルト(Ⅱ)及びこれを含有する製剤(CAS No.1307-96-6)

 酸化コバルト(II)が新たに毒物に指定され、複合酸化物系顔料であるPB28について多くの問い合わせが寄せられた。

PB28 → CoAl2O4
 コバルト、アルミニウムの複合酸化物
 化審法登録番号:1-267(酸化コバルト)、1-23(酸化アルミニウム)

  • 化審法では複数の登録番号で管理されているため混乱が発生
  • 海外は単一物質扱い:CAS No.1345-16-0、EINECS No. 310-193-6

法改正に対する複合酸化物顔料工業会の見解

酸化コバルト(II)の毒物指定コバルト系複合酸化物顔料の取り扱いにつきまして (2018年9月13日)

見解:コバルト系複合酸化物顔料は「毒物に該当しない」

(1)根拠:X線回折において特定の結晶構造を有する単一物質である。

(2)固溶体につきまして
 →複合酸化物顔料は固溶体と同様に取り扱っていた経緯がある。

★毒劇法Q&Aに記述されている「固溶体(混合物)」の意味は?
厚労省:化学的にCという新たな化学物質、分子を形成している状態ではなく、AとBがそれぞれ混合している状態を言っている。
 →複合酸化物顔料はAとBが新たな結合様式を形成して新たにCを形成

(3)SDS記載内容の件
 化審法登録番号が複数記載されている件は、既存化学物質届出を行う際の便宜上のもの。

毒劇法の対象となる顔料

鉛化合物(劇物)

黄鉛(PY34)、クロムバーミリオン(PR104)

バリウム化合物(劇物)

大半のバリウムレーキ顔料は規制対象。ただしPR48:1、硫酸バリウムは除外
※「バリウム化合物を含有する製剤」は対象となっていない
  →体質顔料を加えて混合物にするなどの対策が有効

毒劇法の対象除外となる顔料

セレン化合物及びこれを含有する製剤(毒物)、カドミウム化合物(劇物)

カドミウムレッド(PR108)、カドミウムオレンジ(PO20)
「薬食発0619第1号」において「硫黄、カドミウム及びセレンから成る焼結した物質並びにこれを含有する製剤」として除外

無機シアン化合物及びこれを含有する製剤(毒物)

紺青(PB27)
「紺青及びこれを含有する製剤」として除外

アンチモン化合物及びこれを含有する製剤(劇物)

アンチモンを含有する複合酸化物顔料(PY53、PBr24など)
「酸化アンチモン(V)及びこれを含有する製剤」として除外
※PY53、PBr24などアンチモンを含有する複合酸化物顔料は除外

SDSの記載項目(顔料関係抜粋)

項目2 危険有害性の要約(GHS分類)

酸化鉄 PR101(2019年度 再分類・見直し)

  • 急性毒性:10000mg/kg(経口)
  • 皮膚腐食性/刺激性:区分2→区分に該当しない
  • 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性:区分1→区分に該当しない
  • 特定標的臓器毒性(単回暴露):区分3(気道刺激性)→区分1(呼吸器)
  • 特定標的臓器毒性(反復暴露):区分1(呼吸器)→変更なし

硫酸バリウム PW21(2016年度 新規分類)

  • 特定標的臓器毒性(反復暴露):分類できない→区分1(呼吸器)
  • 水生環境有害性 短期(急性):分類できない→区分3
  • 水生環境有害性 長期(慢性):分類できない→区分3
  • EC50(甲殻類):32mg/L

二酸化チタン(ナノ粒子) PW6(2016年度 再分類・見直し)

  • 急性毒性:2500mg/kg(経口)、10000mg/kg(経皮)
  • 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性:区分2B→分類できない
  • 発がん性:区分2→変更なし
  • 特定標的臓器毒性(反復暴露):分類できない→区分1(呼吸器)
  • 水生環境有害性 長期(慢性):分類できない→変更なし

二酸化チタン(ナノ粒子以外) PW6(2016年度 再分類・見直し)

  • 急性毒性:5000mg/kg(経口)
  • 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性:区分2B→分類できない
  • 発がん性:区分2→変更なし
  • 特定標的臓器毒性(反復暴露):分類できない→区分1(呼吸器)
  • 水生環境有害性 長期(慢性):分類できない→区分4

カーボンブラック PBk7

  • 急性毒性:8000mg/kg(経口)
  • 自己発熱性化学品:区分1
  • 発がん性:区分2
  • 特定標的臓器毒性(反復暴露):区分1(呼吸器)

酸化クロム(III) PG17

  • 急性毒性:5000mg/kg(経口)
  • 呼吸器感作性:区分1
  • 皮膚感作性:区分1
  • 特定標的臓器毒性(反復暴露):区分1(呼吸器)

シアニンブルー PB15、シアニングリーン PG7 

  • 急性毒性:10000mg/kg(経口)
  • 全ての項目で「区分に該当しない」もしくは「分類できない」

混合物のGHS分類

急性毒性

  • ATE:Acute Toxicity Estimates(急性毒性値、急性毒性推定値)
各ばく露経路に関する分類のための変換値(抜粋)
急性毒性範囲値変換値
経口(mg/kg)区分1:0<ATE≤5
区分2:5<ATE≤50
区分3:50<ATE≦300
区分4:300<ATE≤2000
0.5
5
100
500
経皮(mg/kg)区分1:0<ATE≤50
区分2:50<ATE≤200
区分3:200<ATE≤1000
区分4:1000<ATE≤2000
5
50
300
1100
  • 計算式
  • Cunknownif>10%:10%超の未知の成分の濃度
  • ATEmix:混合物のATE
  • Ci:成分iの濃度
  • ATEi:成分iのATE
  • n:成分数(iは1~nの値)
  • 急性毒性(経口) 計算例
  • PB15  急性毒性(経口)  10000mg/kg  50%
  • PG7  急性毒性(経口)  2500mg/kg  25%
  • PW21  急性毒性(経口)  分類できない  25%
  • 混合物の急性毒性値(ATEmix)を求める。
  • 10%超の未知成分の濃度はPW21のみで25%
  • よって計算式左辺は(100ー25)/ATEmix=75/ATEmix
  • 成分1(PB15)の濃度C1は50、急性毒性ATE1は10000
  • 成分2(PG7)の濃度C2は25、急性毒性ATE2は2500
  • よって計算式右辺は50/10000+25/2500=1/200+1/100=3/200
  • 75/ATEmix=3/200 ∴ATEmix=200/3×75=5000mg/kg

呼吸器感作性又は皮膚感作性

分類するための成分濃度
成分の分類混合物の分類基準となる濃度限界
呼吸器感作性物質皮膚感作性物質 
固体、液体気体全状態
呼吸器感作性物質
区分1
≥1.0%≥0.2%
皮膚感作性物質
区分1
≥1.0%
  • 区分1A、区分1B
  • 細区分のためのデータが十分でない場合:区分1に分類
  • データが十分にある場合:
    • 1A(強い呼吸器又は皮膚感作性物質)に分類
    • 1B(他の呼吸器又は皮膚感作性物質)に分類

※区分1Aの場合、上記表の閾値は「≥0.1%」となる。

発がん性

分類するための成分濃度
成分の分類混合物の分類基準となる濃度限界
発がん性物質 区分1発がん性物質 
区分1A区分1B区分2
発がん性物質
区分1A
≥0.1%
発がん性物質
区分1B
≥0.1%
発がん性物質
区分2
≥1.0%
  • 区分1A、区分1B、区分2
  • 区分1:ヒトに対する発がん性が知られている又は恐らく発がん性がある。
  • 区分1A:ヒトに対する発がん性が知られている。→ヒトでの証拠
  • 区分1B:ヒトに対して恐らく発がん性がある。→動物での証拠
  • 区分2:ヒトに対する発がん性が疑われる。

特定標的臓器毒性(単回ばく露)

分類するための成分濃度
成分の分類混合物の分類基準となる濃度限界
区分1区分2
特定標的臓器毒性物質
区分1
≥10%1.0%≤成分<10%
特定標的臓器毒性物質
区分2
≥10%

特定標的臓器毒性(反復ばく露)

分類するための成分濃度
成分の分類混合物の分類基準となる濃度限界
区分1区分2
特定標的臓器毒性物質 区分1≥10%1.0%≤成分<10%
特定標的臓器毒性物質 区分2≥10%

水生環境有害性 短期(急性)

分類するための成分濃度
分類される成分の合計混合物の分類
区分1×M ≥25%短期(急性) 区分1
(M×10×区分1)+区分2 ≥25%短期(急性) 区分2
(M×100×区分1)+(10×区分2)+区分3 ≥25%短期(急性) 区分3

水生環境有害性 長期(慢性)

分類するための成分濃度
分類される成分の合計混合物の分類
区分1×M ≥25%長期(慢性) 区分1
(M×10×区分1)+区分2 ≥25%長期(慢性) 区分2
(M×100×区分1)+(10×区分2)+区分3 ≥25%長期(慢性) 区分3
区分1+区分2+区分3+区分4 ≥25%長期(慢性) 区分4

毒性乗率M:高い水生毒性を持つ成分を混合するときの重み付け

混合物中の高水生毒性成分に関する毒性乗率M
急性水生毒性値
L(E)C50
毒性乗率M慢性水生毒性値
NOEC
毒性乗率M
NRD成分RD成分
0.1<L(E)C50≤10.01<NOEC≤0.11
0.01<L(E)C50≤0.1100.001<NOEC≤0.01101
0.001<L(E)C50≤0.011000.0001<NOEC≤0.00110010
(以降10倍ずつ続く)(以降10倍ずつ続く)
  • 用語説明
  • LC50(Median Lethal Concentration):半数致死濃度
  • EC50(Median Effect Concentration):半数影響濃度
  • NOEC(No Observed Effect Concentration):最大無影響濃度
  • NRD(Non-rapidly degradable):急速分解性がない
  • RD(Rapidly degradable):急速分解性がある
  • 健康有害性 計算例
  • PB15  「区分に該当しない」もしくは「分類できない」  91%
  • PG17  呼吸・皮膚感作性(区分1)  特定標的臓器毒性(区分1)  0.5%
  • PW6  発がん性(区分2)  特定標的臓器毒性(区分1)  2.5%
  • PW21  水生環境有害性(区分3)  特定標的臓器毒性(区分1)  6%
  • 混合物の健康有害性を求める。
  • 呼吸感作性又は皮膚感作性 区分1 合計0.5%
    • 表中に該当するものがない→「区分に該当しない」となる。
    • ※区分1Aの場合は閾値が「0.1%以上」のため「区分1A」となる。
  • 発がん性 区分2 合計2.5%
    • 表中の「区分2が1%以上」に該当→「区分2」となる。
  • 特定標的臓器毒性(反復ばく露) 区分1 合計9%
    • 表中の「区分1が1.0%≤成分<10%」に該当→「区分2」となる。
  • 水生環境有害性 短期(急性)・長期(慢性) 区分3 合計6%
    • 表中に該当するものがない→「区分に該当しない」となる。
    • ※高い水生毒性を持つ成分が無いため毒性乗率Mは考慮しない。
    • ※毒性乗率Mは区分1の中で毒性が強い成分が存在するときに使用する。

項目8 ばく露防止及び保護措置

管理濃度…労働の場の濃度、法規制あり

厚生労働大臣における管理濃度の告示

 管理濃度とは、作業環境管理を進める上で、有害物質に関する作業環境の状態を評価するために、作業環境測定基準に従って実施した作業環境測定の結果から作業環境管理の良否を判断する際の管理区分を決定するための指標である。この数値は、学術団体が示すばく露限界及び各国のばく露規制のための基準等の動向を参考に、作業環境管理技術の実用可能性を考慮して設定されたもの。個々の労働者のばく露濃度と対することを前提として設定されているばく露限界(日本産業衛生学会の「許容濃度」、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)の「TLV」など)とは異なる。
 なお、厚生労働省では、労働安全衛生法第65条の2第2項に基づき、「作業環境評価基準」を定めている。

出典:厚生労働省 職場の安全サイト

作業環境評価基準で定める管理濃度

管理濃度(顔料関係抜粋)
物質名管理濃度
コバルト及び無機化合物(Coとして)0.02mg/m3
ニッケル化合物(ニッケルカルボニルを除き、粉状の物に限る)(Niとして)0.1mg/m3
マンガン及びその化合物(Mnとして)0.2→0.05mg/m3

許容濃度…人へのばく露濃度、法規制なし

日本産業衛生学会における許容濃度の定義

 許容濃度とは、労働者が1日8時間、1週間40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で有害物質に暴露される場合に、当該有害物質の平均暴露濃度がこの数値以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度である。
 最大許容濃度とは、作業中のどの時間をとっても暴露濃度がこの数値以下であれば、ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度である。

日本産業衛生学会 許容濃度等の勧告

許容濃度等の勧告(2021年度、顔料関係抜粋)
物質名許容濃度
アンチモンおよびアンチモン化合物(Sb)0.1mg/m3
三化クロム化合物(Cr3+)0.5mg/m3
コバルトおよびコバルト化合物(Co)0.05mg/m3
ニッケル化合物(Ni、水溶性でないもの)0.1mg/m3
バナジウム化合物(V、五酸化バナジウム)0.05mg/m3
マンガンおよびマンガン化合物(Mn、暫定)0.1mg/m3 (総粉塵)
酸化亜鉛ナノ粒子(暫定)0.5mg/m3
吸入性結晶質シリカ0.03mg/m3
第1種粉塵(タルク、アルミニウム、ベントナイト、カオリナイトなど)2mg/m3 (総粉塵)
第2種粉塵(酸化鉄、カーボンブラック、酸化亜鉛、二酸化チタンなど)4mg/m3 (総粉塵)
第3種粉塵(石灰石、その他の無機および有機粉塵)8mg/m3 (総粉塵)

米国産業衛生専門家会議(ACGIH)

※ACGIH:American Conference of Govermental Industrial Hygienists

 ACGIHでは、作業環境許容濃度をTLV(Threshold Limit Value)と呼んでいる。TLVは、ほとんどすべての作業者が毎日繰り返し暴露しても、有害な健康影響が現れないと考えられる化学物質の気中濃度のこと。

  • TLV-TWA(Time-Weighted Average)
    • 1日8時間、1週40時間の時間荷重平均濃度
  • TLV-STEL(Short-Term Exposure Limit)
    • たとえ8時間TWAがTLV-TWA内にあっても、1日の作業のどの時間においても、超えてはならない15分間TWAとして定義される。
  • TLV-C(Ceiling)
    • 作業暴露のいかなる場合においても超えてはならない濃度

2009 ACGIH 化学物質と物理因子のTLVs

ACGIH(2009年度、顔料関係抜粋)
物質名TWA
アンチモン及び化合物(Sbとして)0.5mg/m3
雲母3mg/m3
カーボンブラック3.5mg/m3
クロム、金属及び無機化合物(Cr3+)0.5mg/m3
コバルト及び無機化合物0.02mg/m3
二酸化チタン10mg/m3
酸化鉄(FeO3)5mg/m3
シリカ、結晶質0.025mg/m3
ニッケル(不溶性無機化合物)0.2mg/m3
バリウム及び水溶性化合物(Baとして)0.5mg/m3
マンガン、単体及び無機化合物(Mnとして)0.1mg/m3(Inhalation)

項目11 有害性情報

急性毒性

NPIRI「Raw Materials Data Handbook Volume 4 Pigments」

Pigments for Which Acute Lethal Dosages Have Been Reported(抜粋)
C.I.NameTest resultsC.I.NameTest resultsC.I.NameTest resultsC.I.NameTest results
PO5bPR53:1bPY1bPB15b
PO13bPR57:1bPY12bPB15:1b
PO16bPR63:1bPY13bPB15:2b
PO34bPR101bPY14bPB15:3b
PO43bPR122bPY17bPB15:4b
PR3bPR177bPY42bPB27b
PR4bPV19bPY53bPB29b
PR22bPV23bPY74bPG7b
PR48:1-4bPW6bPY83bPG36b
PR49:1-2bPW21bPY150bPBk7b

b – Oral LD50(rat) 5000mg/kg or greater (not toxic as defined by FHSA 16 CFR 1500.3 not hazardous as defined by OSHA 29 CFR 1916.25)

変異原性

NPIRI「Raw Materials Data Handbook Volume 4 Pigments」

in Vitro Tests for Mutagenicity(抜粋)
C.I.NameTest resultsC.I.NameTest resultsC.I.NameTest resultsC.I.NameTest results
PO5Slightly positivePR49NegativePV19NegativePB15Negative
PO13NegativePR49:1NegativePY1NegativePB15:1Negative
PR1Slightly positivePR49:2NegativePY12NegativePB15:2Negative
PR4①NegativePR53:1NegativePY74NegativePB15:3Negative
PR4②PositivePR57:1NegativePY34NegativePB15:4Negative
PR22NegativePR63:1NegativePY36PositivePB27Negative
PR48:1NegativePR104NegativePG7NegativePBk7Negative
PR48:2NegativePR108NegativePG36NegativePM1Negative

厚生労働省 強い変異原性が認められた化学物質

 厚生労働省は労働安全衛生法第57条の4に基づき、届出のあった化学物質のうち強い変異原性が認められた化学物質の公表を行っている。「強い変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」に沿って、①ばく露防止対策、②作業環境測定、③労働衛生教育、④ラベルの表示、SDSの交付、⑤記録の保存、等の措置を講ずることとされている。有機顔料ではPR22とPR23が収載されている。

発がん性

日本産業衛生学会

  • 第1群:ヒトに対して発がん性があると判断できる物質・要因
    • この群に分類される物質・要因は、疫学研究からの十分な証拠がある。
  • 第2群:ヒトに対しておそらく発がん性があると判断できる物質・要因
    • 第2群A
      証拠が比較的十分な物質・要因
      疫学研究→証拠:限定的、動物実験→証拠:十分
    • 第2群B
      証拠が比較的十分でない物質・要因
      疫学研究→証拠:限定的、動物実験→証拠:十分でない
      または、疫学研究→証拠:ない、動物実験→証拠:十分
日本産業衛生学会 発がん性分類(顔料関係抜粋)
第1郡結晶質シリカニッケル化合物(精錬粉塵)
第2郡A
第2郡Bカーボンブラック
コバルトおよびコバルト化合物
二酸化チタン
ニッケル化合物(ニッケルカルボニル,製錬粉塵を除く)

国際がん研究機関(IARC)

※IARC:International Agency for Research on Cancer

 IARCは、WHO(世界保健機関)のがんに特化した専門的な機関である。IARCの目的は、がん研究における国際的な協力を促進することで、がんの原因を特定し、予防措置を特定するなど、様々な活動を行っている。

IARCの発がん性分類評価は以下の通り。

  • グループ1:人に対する発がん性がある
  • グループ2A:人に対する発がん性がおそらくある
  • グループ2B:人に対する発がん性が疑われる
  • グループ3:人に対する発がん性について分類できない
  • グループ4:人に対する発がん性がおそらくない
IARC 発がん性分類(顔料関係抜粋)
グループ1ニッケル化合物
グループ2A
グループ2Bカーボンブラック、酸化チタンなど
グループ3PR3、PR53:1、酸化鉄(III)、非晶質二酸化ケイ素、タルクなど

米国環境保護庁(EPA) :発がん性評価

2005年ガイドライン

  • CaH:ヒト発がん性物質
  • L:ヒト発がん性の可能性が高い物質
  • S:発がん性を示唆する物質
  • I:発がん性評価には情報が不十分な物質
  • NL:ヒト発がん性の可能性が低い物質

米国国家毒性計画(NTP) :発がん性評価

  • Known:ヒト発がん性があることが知られている物
  • RAHC:ヒト発がん性があると合理的に予測される物質
  • -:評価ランクが記載されていない物
    ※RAHC:Reasonably Anticipated to be Human Carcinogens

EU:発がん性評価

  • カテゴリー1A:ヒトに対する発がん性が知られている物質
  • カテゴリー1B:ヒトに対しておそらく発がん性がある物質
  • カテゴリー2:ヒトに対する発がん性が疑われる物質

ACGIH

  • A1:ヒトに対する発がん性が確認された物質・要因
     疫学研究→発がん性ありと判定
  • A2:ヒトに対する発がん性が疑わしい物質・要因
     疫学研究→証拠:限定的、動物実験→証拠:十分
  • A3:動物実験で発がん性と分類しかねる物質・要因
     疫学研究→証拠:ない、動物実験→証拠:十分
  • A4:ヒトに対する発がん性が疑わしい物質・要因
     疫学研究→証拠:限定的、動物実験→証拠:十分でない
  • A5:ヒトに対する発がん性の疑いのない物質・要因
     疫学研究→発がん性なしと判定
ACGIH 2009年 発がん性分類(顔料関係抜粋)
A1ニッケル(不溶性無機化合物)
A2シリカ(結晶質)
A3コバルト及び無機化合物
A4カオリン
カーボンブラック
クロム、金属及び無機化合物(Cr3+)
二酸化チタン
酸化鉄(FeO3)
バリウム及び水溶性化合物(Baとして)
マンガン、単体及び無機化合物(Mnとして)

項目14 輸送上の注意

危険物輸送に関する勧告(モデル規則:オレンジブック)

 危険物輸送に関する勧告は国連の危険物輸送等に係わる専門家委員会により作成され、危険物の安全輸送を確保するための輸送要件の国際調和を図ることを目的としている。勧告自体は法的拘束力を持たないが、本勧告をもとに国際機関や各国政府により各種の輸送規則が策定されている。対象となる危険物には4桁の番号(国連番号又はUN番号)が付与され、輸送する際の品名、火薬類、ガス類、引火性液体など危険性の種類に応じた9クラスの分類に基づいて、輸送、表示、梱包方法等が定められている。

危険物クラス(Hazard Class)

国連分類による危険物クラス
クラス区分
クラス1火薬類区分1.1~1.6爆発力:区分1.1>区分1.6
クラス2ガス区分2.1引火性ガス
区分2.2非引火性ガス・非毒性ガス
区分2.3毒性ガス
クラス3引火性液体
クラス4可燃性固体;
自然発火性物質;
水と接して引火性ガスを発生する物質
区分4.1可燃性固体
自己反応性物質
個体鈍性化爆発物
重合性物質
区分4.2自己発火性物質
区分4.3水と接して引火性ガスを発生する物質
クラス5酸化性物質及び有機過酸化物区分5.1酸化性物質
区分5.2有機過酸化物
クラス6毒物及び感染性物質区分6.1毒物
区分6.2感染性物質
クラス7放射性物質
クラス8腐食性物質
クラス9環境有害性物質を含むその他の有害性物質及び物品

容器等級

 クラス1、2及び7並びに区分5.2、6.2及び4.1(自己反応性物質を除く)を除く物質は、容器包装の目的から、その有する危険性の程度に応じて次の3つの容器等級(Packing Group: PG)が割り当てられる。

  • 危険等級I:高い危険性を有する物質
  • 危険等級II:中程度の危険性を有する物質
  • 危険等級III:低い危険性を有する物質

※容器コード:種類・材質・仕様によって付けられたアルファベットと数字からなる記号で、危険品の梱包の際にどのような容器に入れるべきかを指定する際に使われる。

指針番号

 指針は、化学物質を危険性により分類し、対応する緊急時の応急措置を60余に類型化して記載したもので、指針番号ごとに示されている。国連番号あるいは品名リストから指針番号が検索できるようになっており、容器ラベルに指針番号と国連番号を追加表示することにより、万一の事故の際の応急措置の情報を提供することが可能となる。
 2020年度版北米緊急時応急措置指針(ERG2020)はリンク先からダウンロードすることができる。

危険性の優先順位

下表「危険性優先順位表」に関わらず、常に他の危険性に優先するもの

  • 1. クラス1(火薬類)の物質及び物品
  • 2. クラス2(ガス類)のガス
  • 3. クラス3(引火性液体)の液体鈍性化爆発物
  • 4. 区分4.1の自己反応性物質及び個体鈍性化爆発物
  • 5. 区分4.2の自然発火性物質
  • 6. 区分5.2の有機過酸化物質
  • 7. 区分6.1の吸入毒性が容器等級Iの物質
  • 8. 区分6.2の感染性物質
  • 9. クラス7(放射性物質)の物質
危険性優先順位表
分類容器等級4.24.35.1
I
5.1
II
5.1
III
6.1I
経皮
6.1I
経口
6.1
II
6.1
III
8I
液体
8I
個体
8II
液体
8II
個体
8III
液体
8III
個体
3I4.33333333
3II4.33333833
3III4.36.16.16.13883
4.1II4.24.35.14.14.16.16.14.14.184.14.1
4.1III4.24.35.14.14.16.16.16.14.1884.1
4.2II4.35.14.24.26.16.14.24.2884.24.24.24.2
4.2III4.35.15.14.26.16.16.14.288884.24.2
4.3I5.14.34.36.14.34.34.34.34.34.34.34.34.3
4.3II5.14.34.36.14.34.34.3884.34.34.34.3
4.3III5.15.14.36.16.16.14.388884.34.3
5.1I5.15.15.15.15.15.15.15.15.15.1
5.1II6.15.15.15.1885.15.15.15.1
5.1III6.16.16.15.188885.15.1
6.1I経皮86.16.16.16.16.1
6.1I経口86.16.16.16.16.1
6.1II吸入86.16.16.16.16.1
6.1II経皮86.186.16.16.1
6.1II経口8886.16.16.1
6.1III888888

顔料の国連番号

国連番号(顔料関係抜粋)
国連番号品名等級
1361炭素、動物又は植物から製造されたもの4.2
1549無機アンチモン化合物、固体、他に品名が明示されていないもの6.1
1564バリウム化合物、他に品名が明示されていないもの6.1
1588無機シアン化物、固体、他に品名が明示されていないもの6.1
3285バナジウム化合物、固体、他に品名が明示されていないもの6.1
3313有機顔料、自己発熱性のもの4.2

※NITE-CHRIPの確認では、カーボンブラックが国連番号「1361」となっている以外は、上記の化合物であっても国連分類の対象となっていないようである。

輸送規制体系

出典:労働安全衛生総合研究所

消防法

法目的

 消防法は昭和23年に公布されており、火災を予防し、警戒しおよび鎮圧し、国民の生命、身体および財産を火災から保護するとともに、火災または地震等の災害に因る被害を軽減し、もつて安寧秩序を保持し、社会公共の福祉の増進に資することを目的とする法律である。
 危険物は別表第一にまとめられており、有機顔料が主に関係する部分は「危険物第五類」である。「危険物第五類」は自己反応性物質と呼ばれ、ニトロ化合物やアゾ化合物などが対象となっている。

危険物第五類

アゾ顔料(61種)の危険物第五類判定について

化成品工業協会 有機顔料環境保安委員会が行った結果

  • アゾレーキ顔料:非危険物
  • ニトロ基を含まない不溶性アゾ顔料:非危険物
  • ニトロ基を含む不溶性アゾ顔料:危険物

※危険物となる顔料:PR3、PR4、PO1、PO5、PY1、PY5、PY73、PY74、PY75

危険物から除外するためには ・・・

  • 指定された試験を受けて安全性を確認する、
  • 少なくとも体質顔料を2~3割程度添加して顔料濃度を下げる、など

chemSHERPAについて

chemSHERPA

対象となる化学物質

chemSHERPAの対象化学物質
対象とする法規制及び業界基準名称Ver2.05.00 の対象範囲
LR01(日本) 化審法 第一種特定化学物質2021-10-22
LR02(米国) 有害物質規制法(TSCA) 使用禁止又は制限物質(第6条)40 CFR 763
LR03(EU) ELV 指令2011/37/EC
LR04(EU) RoHS 指令 Annex II(EU) 2015/863
LR05(EU) POPs 規則 Annex I(EU) 2021/277
LR06(EU) REACH 規則
Candidate List of SVHC for Authorisation(認可対象候補物質)
及び Annex XIV(認可対象物質)
認可対象候補物質:2022-01-17,
認可対象物質:(EU) 2021/2045
LR07(EU) REACH 規則 Annex XVII(制限対象物質)(EU) 2021/2204
LR08(EU) 医療機器規則(MDR) Annex I 10.4 化学物質CLP:(EU) 2021/849,
SVHC: 2022-01-17, BPR:-
IC01Global Automotive Declarable Substance List (GADSL)2021 GADSL Reference ListVersion 1.0
IC02IEC 62474 DB Declarable substance groups and declarablesubstancesIEC62474D24.00

chemSHERPA物質リストの改定

  • 2021年02月09日改定(Ver.2.03.00)→03月30日(Ver.2.03.10)修正
  • 2021年08月18日改定(Ver.2.04.00)→第25次SVHC、2021年GADSL等
  • 2022年02月09日改定(Ver.2.05.00)→第26次SVHC、化審法一特PFOA
  • 2022年08月改定予定(Ver.2.06.00)→China RoHS追加

chemSHERPA物質リストが修正(Ver.2.03.10)された経緯

chemSHERPAデータ作成支援ツールVer.2.03.00使用停止のお願いと修正版(Ver.2.03.10)公開予定について

 chemSHERPAデータ作成支援ツール Ver2.03.00について、LR07 (EU) REACH 規則 Annex XVII(制限物質)の改訂((EU) 2020/2081)で追加されたEntry75に起因し、含有化学物質の情報伝達に支障をきたすケースがあることが判明した。

REACH 規則 Annex XVII(制限物質) Entry75

 刺青用インク及びパーマネントメイクアップ類中の含有化学物質を制限するもので、金属や色素など複数の化学物質が対象になっている。規制される用途は刺青用インク類に限定されるが、それら物質は他の用途として一般に用いられているものが多く、そのまま情報伝達することで混乱を生じることが懸念される。

結論

 Entry75の反映見送り→ 2.05.00においても対象範囲に含まない様子

REACH 規則 Annex XVII(制限物質) Entry75の対象化学物質(顔料関係抜粋)
顔料
 PR2、PR7、PR9、PR12、PR14、PR15、PR17、PR22、PR112、PR146、PR210、PR269、
 PY1、PY8、PY12、PY14、PY55、PY65、PY74、PY87、PY97、
 PO13、PO16、PO34、PO74、
 PV3、PV39 (閾値:1000ppm)
重金属
 Zinc (閾値:2000ppm)
 Barium (閾値:500ppm)
 Copper (閾値:250ppm)
 Chromium、Cobalt (閾値:0.5ppm)
アゾ系顔料の原材料
 PAA (閾値:0.5ppm)

chemSHERPAの記載項目(顔料関係抜粋)

LR01 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)

化審法

 化審法は、難分解性の性状を有し、かつ人の健康を損なうおそれがある化学物質による環境の汚染を防止するため、昭和48年(1973年)に制定された法律である。新規の化学物質の事前審査制度を設けるとともに、ポリ塩化ビフェニル(PCB)と同様、難分解であり高蓄積性を有し、かつ、長期毒性を有する化学物質を特定化学物質(現在の第一種特定化学物質)に指定し、製造、輸入について許可制をとるとともに使用に係る規制を行うこととされた。

化審法制定の背景 カネミ油症事件

 福岡県北九州市小倉北区にあるカネミ倉庫株式会社で作られた食用油の製造過程で、脱臭のために熱媒体として使用されていたPCB(ポリ塩化ビフェニル)が、配管作業ミスで配管部から漏れて混入し、これが加熱されてダイオキシンに変化した。このダイオキシンを油を通して摂取した人々に、顔面などへの色素沈着や塩素挫瘡(えんそざそう・クロルアクネ)など肌の異常、頭痛、手足のしびれ、肝機能障害などを引き起こした。

ポリ塩化ビフェニル(PCB)問題の経緯

カネミ油症事件~POPs条約まで

  • 1968年(昭和43年) カネミ油症事件
  • 1972年(昭和47年) PCB の製造中止
  • 1973年(昭和48年) 化審法によりPCBを製造及び使用禁止
  • 2001年(平成13年) PCB 特別措置法制定(PCB処分2016年7月まで→2024年3月までに法改正)
  • 2004年(平成16年) ストックホルム条約(POPs条約)発効(PCB処分2028年まで)

化審法の既存化学物質について

一般化学物質 (第二条第七項)

 1973(昭和48)年の化審法の公布の際、製造又は輸入されていた化学物質であり、化審法の規定により名称が公示された化学物質のこと。
 ※優先評価化学物質、監視化学物質、第一種・第二種特定化学物質を除く

  • 第1類 無機化合物
  • 第2類 有機鎖状低分子化合物
  • 第3類 有機炭素単環低分子化合物
  • 第4類 有機炭素多環低分子化合物
  • 第5類 有機複素環低分子化合物
  • 第6類 有機重合系高分子化合物
  • 第7類 有機縮合系高分子化合物
  • 第8類 化工でん粉、加工油脂等の有機化合物
  • 第9類 医薬等の化合物

複合酸化物顔料の取り扱い

「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の運用について」(最終改正:平成30年12月3日、運用開始:平成31年4月1日)

「2. 新規化学物質の製造又は輸入に係る届出関係」に記載→既存化学物質かどうかの判断を行う場合の考え方

 固溶体又は複合酸化物顔料は、それらを構成している酸化物等の混合物として扱うものとする。

例:PBr24 → (Ti,Cr,Sb)O2
 チタン、クロム、アンチモンの複合酸化物
 化審法登録番号:1-558(酸化チタン)、1-284(酸化クロム)、1-543(酸化アンチモン)

「第一種特定化学物質」の取り扱いについて

ヘキサクロロベンゼン(HCB) CAS No. 118-74-1

HCB

TCPA及びソルベントレッド135中の副生HCBに係るBATレベルに関する報告書(平成18年11月)

TCPA由来その他顔料及びフタロシアニン系顔料中の副生HCBに係るBATレベルに関する報告書(平成19年4月)

輸入したテトラクロロ無水フタル酸(TCPA)よりHCBの含有が確認された。

  • TCPA の主たる用途:樹脂等の着色に用いられる染料・顔料や一部の塗料等 の原料
  • TCPA由来の顔料:PY110、PY138等
  • 副生HCBに係る顔料:PG7、PG36等
  • ※原料として用いられるブルークルードのHCBは非検出

テトラクロロ無水フタル酸(TCPA) CAS No. 117-08-0

TCPA

利用可能な最良の技術(BAT)

※BAT:Best Available Technology/Techniques

ハザードが高い第一種特定化学物質の生成を可能な限り抑制し暴露量を低減する。→リスクベース管理

「可能な限り」とは?

 化学物質を製造する際に副生する化学物質について、「工業技術的・経済的に可能なレベル」(BATレベル)まで低減すること。

運用通知

「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の運用について」(最終改正:平成30年12月3日、運用開始:平成31年4月1日)

 『第一種特定化学物質に該当する化学物質が他の化学物質に副生成物として微量含まれる場合であって、当該副生成物による環境の汚染を通じた人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがなく、その含有割合が工業技術的・経済的に可能なレベルまで低減していると認められるときは、当該副生成物は第一種特定化学物質としては取り扱わないものとする。』
 この運用通知に該当するためには、HCBの「自主管理上限値」と「低減方法」を厚生労働省、経済産業省及び環境省(3省)に書類を提出して説明しなければならない。

HCB基準値

副生するHCB含有量の基準値

  • TCPA:200ppm
  • TCPA由来顔料(PY138を除く):10ppm
  • PG36:10ppm

ポリ塩化ビフェニル(PCB) CAS No. 1336-36-3

PCB

非意図的にポリ塩化ビフェニルを含有する可能性がある有機顔料について(平成24年2月10日 News Release)

 化成品工業協会からの報告により、一部の有機顔料が、製造工程において非意図的に生成した微量のポリ塩化ビフェニル (PCB) を含有することが判明した。

PCB を副生することが確認された顔料

  • > 50ppm →製品の製造・輸入は中止
    • PR2、PR112
  • ≦ 50ppm
    • PB15、PB15:1、PB15:3、PB76、PG7、PG36、PG58、
    • PO13、PO16、PO34、PR9、PR38、PR242、PR254、
    • PR269、PV23、 PY12、PY13、PY14、PY17、PY55、
    • PY81、PY83、PY87、PY93、PY95、
    • PY124、PY130、PY152、PY165、PBr25

有機顔料中に副生する PCB の工業技術的・経済的 に低減可能なレベルに関する報告書(平成28年1月29日)

 PCBに関してもHCBと同様にBAT及び運用通知の考えが踏襲される。
 有機顔料中に副生するPCBについては、対象となる有機顔料の種類や製造・ 輸入事業者が多いという特徴がありHCBの水準を示すことは困難であることなどから、BATレベルは50ppm以下が適用される。

副生第一種特定化学物質を含有する化学物質の取扱いについて(お知らせ)(平成28年3月4日)

 三要件のいずれかを満たす有機顔料を製造又は輸入しようとする場合(既に製造又は輸入している場合も含む)は、副生するPCB の含有量を確認し、あらかじめ3省に、事業者において出荷の是非を判断する基準となる自主管理上限値や分析方法、分析頻度等からなる管理方法について報告し、その妥当性について説明する必要がある。

PCB報告の三要件

  • 化学構造に塩素原子を含む顔料
  • 塩素原子を含む原料を使用する顔料
  • 合成工程において塩素化芳香族系の溶媒を用いる顔料

ポリ塩化ビフェニル汚染物の廃棄

「ポリ塩化ビフェニル汚染物等の該当性判断基準について(通知)」(令和元年10月11日 抜粋)

  • PCB廃棄物の処理においては、原則として処理物の判断基準と同じ数値をPCB汚染物等の該当性の判断基準とする。
     例) 廃油:0.5mg/kg以下、汚泥:検液中の濃度が0.003mg/L以下など
  • 塗膜くずに代表されるようなPCBを含有する廃棄物であり、PCBを含む油が自由液として明らかに存在していない場合については、PCBの含有濃度が0.5mg/kg以下となる場合は、PCB汚染物に該当しないものと判断するものとする。
     例) 塗膜くず、少量の低濃度PCB汚染油が染み込んだもの(紙くず、木くず、繊維くずなど)
  • 自由液:廃棄物からPCBを含む油が染み出して液体状態として確認できるもの。
  • BATレベル以下のPCB・HCBを含有する顔料の廃棄方法について明確な記述は確認できないが、廃棄物となってもPCB特措法の対象外として運用されている事例がある。ただし、実際に廃棄する場合は、PCB含有濃度を0.5mg/kg以下へ減少させるべき。

各国インベントリー

各国インベントリー

各国の新規化学物質届出制度の概要

各国の新規化学物質届出制度の概要
日本米国
法規等化審法【労働安全衛生法】有害物質規制法(TSCA)
既存化学物質リスト既存化学物質名簿TSCAインベントリー
登録の種類(1)新規化学物質の届出(2)届出免除物質の申出(3)少量新規化学物質の申出(≤1t/Y)(4)低懸念ポリマーの申出(5)低生産量新規化学物質の申出 (≤10t/Y、難分解・非高蓄積性)(1)PMN(2)PMN免除届出①TME申請②LVE届出③LoREX免除届出※ポリマー免除は届出不要
要求される情報(1)新規化学物質の届出物質の構造式、物理化学的性状・成分組成、用途、製造又は輸入予定数量、分解度試験、濃縮度試験、スクリーニング毒性試験、生体毒性試験等(2)少量新規化学物質の申出(1)の届出の際に「低生産量新規化学物質の審査の特例申出書」を添付物質の化学的アイデンティティ、不純物、副生物、年間製造・輸入推定量、用途情報、ハザード情報、製造プロセス・ばく露・環境排出、健康・環境影響データ等※PMN:製造(輸入)前届出 TME:試験販売免除 LVE:少量免除 LoREX:低環境放出・低人ばく露
 
カナダ欧州
法規等1999年カナダ環境保護法(CEPA1999)REACH規則
既存化学物質リスト国内物質リスト(DSL)非国内物質リスト(NDSL)REACH登録リスト
登録の種類ポリマーか否か、製造・輸入量(年間)、NDSLへの収載の有無、カテゴリー、規制要件軽減ポリマーへの該当の有無等登録:1t/Y以上の物質そのもの又は混合物中の物質、放出が意図される1t/Y以上のアーティクル中の物質等※既存登録者とデータ共有が必要
要求される情報付属書5(NDSL非収載の一般の化学品、製造・輸入量>1t/Y)の場合:物質のアイデンティティ、SDS、物理化学的データ、生分解データ、急性毒性データ、変異原性データ、急性水生毒性データ、ばく露情報、外国等での登録情報等通常の登録:IUCLIDの形式製造・輸入者、物質のアイデンティティ、用途情報、付属書VII~XIで要求される試験結果(トン数バンドによって相違) 、ばく露情報、化学品安全性報告書(CSR;10t/Y以上で必要)等(EU)2018/1881により2020年1月1日からナノ材料の情報が追加
 
トルコスイス
法規等化学品の登録、評価、認可及び制限に関する規則(KKDIK規則)化学品法(ChemG)、化学品政令(ChemV)等
既存化学物質リスト既存化学物質リストに相当する化学物質リストはないEINECS⇒REACH登録物質

※2020年よりEUのREACH登録された物質に変更された。登録から外れた物質は移行期限までに登録する必要がある
登録の種類登録:1t/Y以上の物質/混合物中の物質、意図的放出のある1t超/Y/業者のアーティクル中の物質等※事前物質情報交換フォーラム(事前MBDF)への参加を義務付けられる。新規物質の届出(政令第27条)製品・プロセス指向研究開発に関する新規物質の通知(政令第34条)
要求される情報REACH規則に準拠している。通常の登録:技術一式文書、化学品安全性報告書(10t/Y以上)その他:リスク管理措置情報、アーティクルの使用概要、予定数量、顧客リスト等※事前MBDFの提出も必要製造/輸入基準量、届出者、物質のアイデンティティ、製造・使用に関する情報、分類・表示、安全な使用のための指針、ばく露の評価、物理化学的性質・健康有害性・環境有害性に関するローバイスト要約書、SDS等
 
オーストラリアニュージーランド
法規等2019年工業化学品法2019年工業化学品(一般)規則1996年有害性物質・新生物(HSNO)法、2017年ハザードの最低限度告示
既存化学物質リストオーストラリア工業化学品インベントリー(AIIC)ニュージーランド化学品インベントリー(NZIoC)
登録の種類6つのカテゴリー区分収載される導入:AIIC収載あり免除される導入:非常に低リスク報告される導入:低リスク審査される導入:中~高リスク例外的状況の導入:重大なリスク商業的評価の導入:商業的応用確認インベントリーに収載されるものは「審査される導入」のみRelease(製造・輸入)申請低有害性・類似物質の迅速評価申請封じ込め状態での有害性物質の申請緊急事態における有害性物質の申請有害性物質の積替え承認の申請

※有害性が無ければ、有害性の新規物質が含まれていても申請は要求されない
要求される情報「審査される導入」審査証明書を申請し保有する。審査証明書の記載内容:工業化学品の名称、審査範囲、製造・使用に関する情報等Release申請:申請者の情報、物質のアイデンティティ、化学的・物理的特性、有害性特性情報、国際的審査状況等迅速評価申請:上記の他、申請に該当することを証明する情報、相当なリスクに関する情報、類似物質とのリスク比較等
 
フィリピンベトナム
法規等共和国法律No.6969「1990年毒性物質及び有害性・核廃棄物管理法」化学品法 第06/2007/QH/12号政府政令 第113/2017/ND-CP号化学品法部令 第32/2017/TT-BCT号
既存化学物質リストフィリピン化学品及び化学物質インベントリー(PICCS)国家化学品リスト国際的化学品リスト
登録の種類(1)製造前及び輸入前届出(PMPIN)(2)届出免除物質に対する事前の報告・許可・通知上の提出等届出免除物質に対する要件・小規模製造事業者・少量輸入として年間1tを超えない新規化学品の輸入(1)新規化学品の登記申請(2)科学的研究又は社会秩序及び安全保障の目的で使用される新規化学品の登記申請
要求される情報事業所情報、化学品識別情報(化学品名、CAS No.、X線回折又はマススペクトル)、生産量・輸入量、用途、職業ばく露、環境放出及び処分の見積り、物理化学的試験結果、毒性学的試験結果(発がん性、感作性、急性及び慢性毒性、刺激性、変異原性、催奇形性)、環境衛生試験結果等(1)の申請:IUPAC名称、化学式、物理的化学的性質及び危険性についての情報、外国の2つの化学品リストに掲載されているその化学品のCAS No.又はUN番号(2)の申請:IUPAC名称、化学式、化学品の使用目的及び使用時期についての情報
 
韓国中国
法規等化評法【産業安全保険法(産安法)】※化評法で登録した物質は産安法での登録は不要新化学物質環境管理弁法新化学物質登記指南・関連資料
既存化学物質リスト韓国既存化学物質インベントリー(KECI)現有化学物質名録
登録の種類(1)新規化学物質登録(0.1t/Y以上)(2)新規化学物質等申告(0.1t/Y未満)(3)既存化学物質登録(1t/Y以上)(4)登録免除確認申請(5)事前申告(1)常規登記(10t/Y以上)(2)簡易登記(1t/Y以上、10t/Y未満)(3)届出(1t/Y未満、新化学物質のモノマー又は反応体の含量が2%を超過しないポリマー又は低懸念ポリマー)
要求される情報登録申請資料:主要用途、分類・表示、物化性資料、人体有害性、環境有害性、ばく露情報、危険性資料等審査資料が一部省略される登録:健康・環境有害性の分類がない既存化学物質、現場中間体及び輸送分離中間体、QSAR文献等から有害性がないと判断できる物質常規登記:常規登記申請書、測定試験報告又は資料(物理化学的性質、健康毒理学・生態毒理学)、環境リスク評価報告等簡易登記:簡易登記申請書、測定試験報告又は資料(物理化学的性質、生態毒理学)、環境リスク評価報告等届出:届出表、相応情況証明資料、法人証書・営業許可証のコピー、既知の環境・健康気概特性や環境リスク等
 
台湾
法規等毒性化学物質管理法【職業安全衛生法】※0.1t/Yを超える既有化学物質を製造または輸入する場合、超えた日から6か月以内に付表5の第1段階登録で指定された項目に従って化学物質データの登録をする。※第2段階登録は、付表6に特定された物質(106物質)について、製造、輸入量が1t/Yを超える場合は、標準登録の義務が生じる。
既存化学物質リスト既有化学物質台帳(公告リスト)
登録の種類新化学物質 標準登録、簡易登録、少量登録既有化学物質 第1段階登録、標準登録申告
要求される情報標準登録(≥1t/Y):登録人、物質情報、物質製造・用途、危害分類及び標示、安全使用情報、物化特性情報、毒理情報、生態毒理情報、危害評価情報、ばく露評価情報等簡易登録(≥0.1t/Y、<1t/Y):登録人、物質情報、物質製造・用途、危害分類及び標示、安全使用情報、物化特性情報等少量登録(<0.1t/Y):登録人、物質情報、物質製造・用途等申告:登録人及び登録コード、物質製造及び輸入数量(前年1~12月)※()内の数字は一般物質の数字※CMR物質の場合は0.1t/Y未満でも標準登録となる※科学研究開発用途で1t/Y未満の新化学物質は登録不要、1t/Y以上で簡易登録、10t/Y以上で標準登録となる※製品及び製造工程研究開発物質、単一の場所で製造され消費される中間体、ポリマーは1t/Y未満で少量登録、10t/Y未満で簡易登録、10t/Y以上で標準登録となる

中韓台の化学物質登録制度比較

中国

  • 新規化学物質環境管理登録弁法(修正弁法):2021年1月1日施行
  • 新規物質:「中国現有化学物質名録」に収載されていない物質。
  • 修正弁法では登録から5年経過後、収載候補の物質が公示⇒公告

韓国

  • K-REACH:≥100kg/Yの新規化学物質、≥1t/Yの既存化学化学物質が対象。
  • 年間100㎏未満の物質については申告が必要。
  • 改定前はK-REACHでは510物質が登録対象となっていたが、改定後はそれ以外の既存化学物質についても登録が必要となった。
  • ※産業安全保健法はK-REACH登録により同法の登録をしたとみなされる。

台湾

  • 新規化学物質:既有化学物質インベントリー(TCSI)に収載されていない物質。
  • 標準登録の物質および少量登録の低懸念ポリマーは5年後にTCSIに収載される。
  • 毒性化学物質として公告された物質もTCSIに収載される。

韓国 化評法改正

重点管理物質の指定一部改正告示

  • 2022年4月27日公布、即日施行
  • これまで別表1と別表2に分かれていたリストを1つにまとめる。
  • 4種を削除し、内分泌系障害、残留性・生物蓄積性・毒性及び高残留性・高生物蓄積性が確認された54種(162物質)を新たに追加。
  • 新たに指定された162物質の申告及び情報提供の義務は2024年1月1日から適用される。
  • ※顔料の追加は確認されていない。
有害化学物質と重点管理物質について
有毒物質化管法;有害性がある物質
輸入時の環境部長官への申告等が必要
制限物質化評法;特定の用途において危害性が大きいと認められる物質
特定用途での取扱が禁止、環境部長官の許可・承認が必要
禁止物質化評法;危害性が大きいと認められる物質
試験用等の試薬を除いて取扱が禁止
事故警戒物質化管法;事故発生可能性が高いか被害規模が大きいと懸念される物質
管理基準の遵守、危害管理計画書の作成・提出等が必要
重点管理物質化評法;K-REACH改正案により有害性があると懸念される化学物質
製品内含有化学物質の申告・情報提供が必要

各国インベントリーの整備状況

ユーラシア経済連合(EAEU)

加盟国:ロシア、カザフスタン、ベラルーシ、キルギス、アルメニア

  • 2017年03月03日:化学品の安全に関するEAEU技術規則 公布
  • 2021年06月02日:技術規則(TR EAEU 041/2017)施行⇒発効を延期(2022年11月30日?)することが決定された様子。

ロシアの動き…

  • 2016年10月07日:化学品の安全性に関する技術規則 公布
  • 2019年11月11日:登録サイトの運用開始、登録期限2020年08月01日
  • 2021年07月01日:施行

トルコ

  • 2017年06月23日:KKDIK規則(トルコ版REACH) 公布
  • 2017年12月23日:施行 ※EU REACHを考慮して作成されている

登録の手順

  • 2020年12月31日までに物質情報交換フォーラム(MBDF)に参加
  • 2020年12月31日~2023年12月31日の間に本登録

タイ

  • 2020年06月22日:DIWがインベントリーデータベースをリリース
    • ※DIW:工業省産業規制局
    • ※データ検証中、データ収集中が多数あり整備途上の段階

ベトナム

  • 化学物質管理は化学品法(法律No.06/2007/QH12)に規定
  • 政令No.113/2017/ND-CPでGHS分類・化学物質登録実施詳細を規定
  • 2018年08月02日:MOITが国家化学物質データベースの運用を開始
    • ※ MOIT:ベトナム商工省
    • ※ 2020年03月01日時点で36,777物質を収載

ブラジル

  • 2016年06月に草案提出
  • 2018年09月に改定案が公開
    • ※あまり進展が無いように見える

LR02 TSCA

米国 有害物質規制法(TSCA)について

 TSCAにおける製造量・使用量に係る規制は、第5条と第6条の2つに基づいて行われる。

第5条

 新規化学物質や既存化学物質の新規用途を事前審査の対象としており、現在までに1,800以上の物質が対象となっている。化学物質の新規用途についてリスク評価を行い、その物質の製造や使用を制限する規則が重要新規利用規則(SNUR:Significant New Use Rule)である。

第6条

 既存化学物質に対する製造・使用の禁止/数量制限、用途規制等の規制措置を規定しているが、現行法では「不当なリスク」に対する第6条発出の妥当性の証明が難しく、PCB、六価クロム等の限定的な物質に対してしか導入されていない。→5種のPBT物質

米国EPAが提案する5種のPBT物質に対するリスク管理

TSCA第6条(h) PBT物質

 米国EPAは改正TSCAに基づき、難分解性、高蓄積性、毒性を有する5種のPBT物質に対するTSCA第6条(h)のリスク管理を提案することを発表した。 これらの物質、物質を含有する混合物や成形品は製造・輸入や加工が禁止され、流通も禁止されることになる。

5種のPBT物質

  • デカブロモジフェニルエーテル【decaBDE】
  • フェノール、イソプロピルリン酸(3:1)【PIP (3:1)】
  • 2,4,6-トリス(tert-ブチル)フェノール【2,4,6-TTBP】
  • ヘキサクロロブタジエン【HCBD】
  • ペンタクロロチオフェノール【PCTP】

LR03 ELV指令

ELV指令(2000/53/EC、2011/37/EU)

 自動車からの廃棄物発生を抑制すること及び廃自動車の環境への影響を軽減することを目的に、2000年に公布された。
 黄鉛、クロムバーミリオンやカドミウムレッド、カドミウムオレンジなどが規制の対象になりうる。また、クロムを含有する複合酸化物顔料は六価クロムの含有が懸念されるため、使用の際には注意が必要である。

ELV指令 特定有害物質と閾値
特定有害物質閾値 ( 最大許容濃度 )
鉛 (Pb)0.1wt%(1000ppm)
水銀 (Hg)0.1wt%(1000ppm)
六価クロム (Cr6+)0.1wt%(1000ppm)
カドミウム (Cd)0.01wt%(100ppm)

LR04 RoHS指令

RoHS指令(2002/95/EC、2011/65/EU)

 電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用をEU加盟国で同じレベルで規制し、電気・電子機器の廃棄物による環境破壊や健康に及ぼす危険を予防することを目的に設定された。(EU)2015/863が2019年7月22日から適用されている。
 ELV指令と同様に黄鉛、クロムバーミリオンやカドミウムレッド、カドミウムオレンジなどが規制の対象になりうる。また、クロムを含有する複合酸化物顔料は六価クロムの含有が懸念されるため、使用の際には注意が必要である。

RoHS指令 特定化学物質と閾値
特定有害物質閾値 ( 最大許容濃度 )
鉛 (Pb)0.1wt%(1000ppm)
水銀 (Hg)0.1wt%(1000ppm)
六価クロム (Cr6+)0.1wt%(1000ppm)
カドミウム (Cd)0.01wt%(100ppm)
ポリ臭化ビフェニル (PBB)0.1wt%(1000ppm)
ポリ臭化ジフェニルエーテル (PBDE)0.1wt%(1000ppm)
フタル酸ジ -2- エチルヘキシル (DEHP)0.1wt%(1000ppm)
フタル酸ブチルベンジル (BBP)0.1wt%(1000ppm)
フタル酸ジ -n- ブチル (DBP)0.1wt%(1000ppm)
フタル酸ジイソブチル (DIBP)0.1wt%(1000ppm)

RoHS指令の改正

  • 2002/95/EC
    • 2003年02月13日公布、2006年07月01日適用開始
    • 制限物質6物質からスタート
  • 2011/65/EU
    • 2011年07月01日公布、2013年01月03日適用開始
    • 対象製品拡大(医療用機器等)、CEマーク貼付開始
  • 欧州委員会委任指令 (EU)2015/863
    • 2015年06月04日公布、2019年07月22日適用開始
    • 制限物質10物質へ拡大

LR05 POPs規則

ストックホルム条約(POPs条約)

 POPs条約は、残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)から人の健康と環境を保護することを目的としている。環境中での残留性、生物蓄積性、人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念されるポリ塩化ビフェニル(PCB)、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)等の残留性有機汚染物質の、製造及び使用の廃絶・制限、排出の削減、これらの物質を含む廃棄物等の適正処理等を規定している。

参考:ロッテルダム条約(PIC条約)

 PIC条約は、先進国から発展途上国に有害な化学物質や駆除剤が不法に輸出されることを防ぐことを目的としている。規制される化学物質や駆除剤を輸出する場合は、人の健康や環境への有害性・危険性に関するラベルやSDSの添付が求められる。
※両条約ともにPCB、HCBが規制対象となっているため、注意が必要である。

残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)

  • POPRC15(2019年10月1日~4日)
    • ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)とその塩及びPFHxS関連物質
  • POPRC16(2021年1月11日~16日)
    • デクロランプラス並びにそのsyn-異性体及びanti-異性体(難燃剤)
    • メトキシクロル(殺虫剤)、UV-328(紫外線吸収剤)
  • POPRC17(2022年1月24日~28日)
    • メトキシクロル→附属書Aへ追加
    • デクロランプラス、UV-328→リスク管理に関する評価を検討
    • クロルピリホス、
      中鎖塩素化パラフィン(炭素数14~17で塩素化率45重量%以上のもの)、
      長鎖ペルフルオロカルボン酸(PFCA)とその塩及び関連物質
       →リスクプロファイル案を作成

ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)

※PFAS:Per- and polyfluoroalkyl substances

出典:日本フルオロケミカルプロダクト協議会(FCJ) ウェビナー資料

欧州の定義

 少なくとも1つの完全にフッ素化されたメチルまたはメチレン炭素原子(H/Cl/Br/I原子が結合していない)を含むフッ素化物質。
 ⇒少なくとも1つの「-CF2-」または「-CF3」を含む物質

 EU各国当局は、PFASの製造・使用による環境と人への健康リスクを制限するため、REACH規則案を共同で作成する。同規則に関する決定は、2025年の発効が計画されている。
 ⇒PFASが包括的に制限されるため、顔料も対象となる可能性がある。

米国EPAの定義

 PFASの構造定義は、単位R-(CF2)-C(F)(R’)R”を構造的に含む過フッ素化およびポリフッ素化物質である。CF2およびCF部分は両方とも飽和炭素であり、R基(R、R’またはR”)のいずれも水素でない。
 ⇒ほぼ全ての有機フッ素化学製品が対象

 米環境保護庁(EPA)は、安全飲料水法と有害物質規制法(TCSA)を改正したPFASの規制強化や、PFOAのSNUR追加についても検討を進めている。

出典:日本フルオロケミカルプロダクト協議会(FCJ) ウェビナー資料

顔料との関係

PFAS定義:少なくとも1つの「-CF2-」または「-CF3」を含む物質
「-CF3」を含む顔料(抜粋)→PY154、PY128、PO60、PR222、PR242

参考:PY154の構造

PY154

LR06・LR07 REACH規則

REACH規則 Regulation (EC) No 1907/2006

 人の健康と環境の保護、欧州化学産業の競争力の維持向上などを目的

リスク評価

従来まで ・・・

 新規化学物質:事業者が実施、既存化学物質:行政が実施

REACH 規則

 既存化学物質と新規化学物質の扱いをほぼ同等に変更
 これまでは政府が実施していたリスク評価を事業者の義務に変更

安全情報の共有化

 流通段階での化学物質の安全性や取扱いに関する情報の共有を強化

登録対象

 年間の製造・輸入量が、事業者当たり 1トンを超えている化学物質

REACH規則上の「物質」、「調剤」、「成形品」

物質

 化学元素、および何らかの製造プロセスを経て得られた化合物
 SDS 上で単一物質と表記された顔料など

調剤

 2以上の物質からなる混合物
 体質顔料を含む混合顔料や塗料、インク、トナーなど

成形品

 形状、表面またはデザインが、その化学組成よりも大きく機能を決定する物体 (製品、物品)
 塗版や液晶パネルなど
 成形品は基本的に REACH 登録対象外(届出は必要)
  ただし ・・・ 以下の場合は情報提供の義務が発生する。
   意図的に放出される場合
   高懸念物質が0.1wt%を超えて含有する場合

高懸念物質(REACH規則 第57条)

SVHC:Substances of Very High Concern

認可対象候補物質として登録→付属書 XIV に収載(認可対象物質)

  • 一定程度以上の発ガン性・変異原性・生殖毒性物質(CMR物質)
  • 残留性、蓄積性、毒性を有する物質(PBT物質)
  • 残留性及び蓄積性が極めて高い物質(vPvB物質)
  • 上記以外の化学物質で、内分泌かく乱特性を有しており人の健康や環境に深刻な影響がありそうなもの(個別に特定)

成形品中に0.1wt%を超えて含有する場合は、情報提供の義務が発生する。

CLSとは?

 最近では広い意味でのSVHCと区別するため、認可対象候補物質リストに記載されている物質をCLS(Candidate List of substances of very high concern for Authorisation)と呼ぶようになってきている。

SVHCとして直接対象となっている顔料

対象顔料

  • 黄鉛 (PY34)、クロムバーミリオン (PR104)
  • 硫化カドミウムが収載されているためカドミウム系顔料は対象となりうる。
  • Pyrochlore, antimony lead yellow(PY41)も収載されているが、色材としてのサプライヤーは少ないものとみられる。

SVHCとして対象となっている不純物

対象不純物(一例)

  • 特定芳香族アミン(PAA)→表4-4の赤字参照
    • o-トルイジンなど
      一部のアゾ顔料に含有しているとの報告がある。
  • 4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(別名:ミヒラーケトン)
    • 一部の染付顔料に含有しているとの報告がある。
  • 多環芳香族炭化水素(PAH)
    • アントラセン、ベンゾ[def]クリセン(ベンゾ[a]ピレン)など
      カーボンブラックに含有しているとの報告がある。
  • ニトロベンゼン
    • 顔料合成時の有機溶剤

LR08 MDR・CLP規則

MDR(Medical Device Regulation)

欧州 医療機器規則 Annex I 10.4 化学物質

 MDRはEUにおける医療機器の製造・流通を規制する仕組みで、「Annex I 10.4」において対象となる化学物質が指定されている。
 具体的には、

  • CLP規則のAnnex VI part 3のCMR Category 1Aと1B物質
     →鉛やニッケルを含有する顔料が該当する。
  • REACH規則第59条でヒトに対する内分泌かく乱に基づき認可対象候補物質リストに収載されるもの
     →一般的な顔料はSVHC(CLS)にほぼ該当しないと考えられる。
  • 殺生物性製品規則(BPR)第5条(3)の最初のサブパラグラフに従って欧州委員会が承認する委任法令によるもの
     → CLP規則のCMR Category 2に該当する場合は注意が必要。

※ナノマテリアルは、chemSHERPAの対象とされていない。

CLP規則 Regulation (EC) No 1272/2008

 CLP規則は、物質及び混合物の分類、表示及び包装に関する規則であり、2009年1月20日に発効された。
 これまでのEUの分類、包装、表示システム(指令67/548/EEC、指令1999/45/EC)にGHSを導入し、REACH規則で導入された分類・表示インベントリーを包含したものである。

  • 指令 67/548/EEC:危険物質指令
     付属書Iには4,000を超える化学物質の危険有害性リストが収載されている。
  • 指令 1999/45/EC:危険調剤指令
     化学物質の危険有害性を調剤(混合品)の成分濃度別に評価している。

※CLP規則では、届出の該当化学品をEUで製造、又はEUに輸入する者は、物質ごとに分類・表示の結果を欧州化学品庁(ECHA)に届出る義務がある。

改正CLP規則

欧州毒性情報センター届出(PCN)

※PCN:The Poison Centres Notification

 2017年3月にCLP規則が改正された((EU) 2017/542)。改正ではAnnexVIIIが追加され、CLP規則第45条で要請された緊急時の健康対応について規定している。混合物を上市する輸入者及び川下ユーザーに対して、EU加盟国間で「調和化された情報」に基づいて届出を行うことを義務付けており、2021年1月1日から適用された。

対象物質

  • 混合物
  • 物理的危険性や健康有害性を有すること(環境有害性のみは対象外)
  • EU市場に上市すること

適用開始日

  • 消費者用途 2021年1月1日 消費者によって使用されるもの
  • 業務用途  2021年1月1日 専門家によって使用されるもの
  • 工業用途  2024年1月1日 工業用地だけで使用されるもの

固有の処方識別子(UFI)

※UFI:Unique Formula Identifier

 UFIは混合物あるいは混合物群に対し、一意的に割り当てられる16桁の英数字コードのことである。
 サプライヤーは、危険有害性を持つ混合物や危険有害性を持たない混合物について自主的に届出を行い、UFIを取得することができる。
 PCNを行うためには、サプライヤーは混合物情報を川下ユーザーへ提供する必要があるが、代替手段としてUFIを提供し、営業秘密を保持することができる。

欧州の法令体系

 欧州の法体系は第1次法(条約)、第2次法、判例の3種類があり、そのうち第2次法は以下のように分けられている。

規則(Regulation)

 すべての加盟国に直接適用され、加盟各国の国内法を必要とせずに国内法と同様の拘束力を持つ。
例:REACH規則 (EC)No 1907/2006

指令(Directive)

 加盟国が自国の国内法を制定し、その国内法によって拘束力を発揮する。
例:改正RoHS指令 2011/65/EU

決定(Decision)

 特定の対象者(加盟国、企業、個人等)に対して直接適用され拘束力を有し、国内法の制定は必要としない。
例:RoHS指令の適用除外追加の決定 2011/534/EU

勧告(Recommendation)、意見(Opinion)

 法的拘束力無し

欧州の法規制 まとめ

規則(EC) No 1907/2006(REACH規則) 

  • AnnexXIV 認可対象物質
    • SVHCから特定された物質
  • AnnexXVII 制限対象物質
    • 76/769/EEC(危険物質及び調剤の上市と使用の制限指令)附属書Iから移行
    • 最大許容濃度を参照→ELV指令(2000/53/EC)、RoHS指令(2002/95/EC)

規則(EC) No 1272/2008(CLP規則)

指令67/548/EEC(危険物質指令)
+指令1999/45/EC(危険調剤指令)
+REACH規則の分類・表示インベントリー

  • AnnexVI
    • Table3.1 CLP規則の分類・表示リスト
    • Table3.2 67/548/EECの分類・表示リスト

LR09 China RoHS

China RoHS

 2016年7月に「電器電子製品有害物質使用制限管理弁法」が施行された。この管理弁法は特定有害成分が含まれる電器電子製品の生産、販売、輸入を管理する。2019年3月より施行される管理目録では12種類の電器電子製品が列挙されており、合格評価制度が運用されている。

chemSHERPAへ追加の背景

 中国のサプライチェーンにおいて、「China RoHS」に関する情報伝達が重要となりつつあるため、Ver2.06.00より「China RoHS」を管理対象基準に追加することになった。

内容

  • 追加する管理対象基準:LR09 China RoHS
  • 対象法規:电器电子产品有害物质限制使用管理办法(中国語)
  • 現在収載予定の物質:上記該当法規の対象物質
    • カドミウム:均質材料中に0.01重量%
    • 鉛、水銀、六価クロム、PBB、PBDE:均質材料中に0.1重量%

IC01 GADSL

※GADSL:Global Automotive Declarable Substance List

 GADSLとは、自動車業界で利用されているIMDS(International Material Data System)の申告物質や禁止物質のリストで、以下の通り分類されている。

  • P:すべての用途において禁止
  • D/P:使用目的によっては禁止、その他については申告が要求される
  • D:閾値を超えて使用する場合は申告が要求される

表題:GADSL 対象物質(顔料関係抜粋)

GADSL 対象物質(顔料関係抜粋)
芳香族アミン(D,≤0.1%)
溶出バリウム(D,≤1%)
コバルト化合物(D/P,≤0.1%)
ニッケル化合物(D/P,≤0.1%)
HCB(D/P,≤BAT)
PCB(P,≤BAT)
ロジン(D,≤0.1%)
カドミウム化合物(D/P,≤0.01%)
六価クロム(D/P,≤0.1%)
鉛化合物(D/P,≤0.1%)など

IC02 IEC 62474

IEC 62474

 電気電⼦業界の製品に含有する化学物質や構成材料に関するサプライチェーンにおける情報伝達の国際規格

IEC

 国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)のこと。電気及び電子技術分野の国際規格の作成を行う国際標準化機関で、各国の代表的標準化機関から構成される。

DSL

 報告対象物質リスト(Declarable Substance List)に収載されている報告対象物質/物質群。報告対物質群については、参照物質リスト(Reference substance List; RSL)に個別の物質が例示されている。

IEC 62474 対象物質(顔料関係抜粋)
22種の芳香族アミン(繊維/皮革製品,30ppm)
コバルト化合物(意図的添加)
ニッケル化合物(意図的添加)
PCB(意図的添加)
PAH(プラスチック/ゴム部分,1ppm,0.5ppm)
カドミウム化合物(100ppm)
六価クロム(1000ppm)
鉛化合物(1000ppm)など

食品用容器包装の規制

食品衛生法

法目的

 この法律は、食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講じることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もって国民の健康の保護を図ることを目的とする。

改正の趣旨(2018年6月13日公布)

 我が国の食をとりまく環境変化や国際化等に対応し、食品の安全を確保するため、広域的な食中毒事案への対策強化、事業者による衛生管理の向上、食品による健康被害情報等の把握や対応を的確に行うとともに、国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備、実態等に応じた営業許可・届出制度や食品リコール情報の報告制度の創設等の措置を講ずる。

施行期日(PL関連:2020年6月1日施行)

  公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日

出典:食品用器具及び容器包装の規制の在り方に関する技術検討会 資料

色材の取り扱いに関する関連条文

第18条第3項(新設)

 器具又は容器包装には、成分の食品への溶出又は浸出による公衆衛生に与える影響を考慮して政令で定める材質の原材料であって、これに含まれる物質(その物質が化学的に変化して生成した物質を除く。)について、当該原材料を使用して製造される器具若しくは容器包装に含有されることが許容される量又は当該原材料を使用して製造される器具若しくは容器包装から溶出し、若しくは浸出して食品に混和することが許容される量が第一項の規格に定められていないものは、使用してはならない。ただし、当該物質が人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める量を超えて溶出し、又は浸出して食品に混和するおそれがないように器具又は容器包装が加工されている場合(当該物質が器具又は容器包装の食品に接触する部分に使用される場合を除く。)については、この限りでない。

第50条の4(新設)

第1項 第18条第3項に規定する政令で定める材質の原材料が使用された器具又は容器包装を販売し、又は販売の用に供するために製造し、若しくは輸入する者は、厚生労働省令で定めるところにより、その取り扱う器具又は容器包装の販売の相手方に対し、当該取り扱う器具又は容器包装が次の各号のいずれかに該当する旨を説明しなければならない。

一 第18条第3項に規定する政令で定める材質の原材料について、同条第1項の規定により定められた規格に適合しているもののみを使用した器具又は容器包装であること。
二 第18条第3項ただし書に規定する加工がされている器具又は容器包装であること。

第2項 器具又は容器包装の原材料であって、第18条第3項に規定する政令で定める材質のものを販売し、又は販売の用に供するために製造し、若しくは輸入する者は、当該原材料を使用して器具又は容器包装を製造する者から、当該原材料が同条第1項の規定により定められた規格に適合しているものである旨の確認を求められた場合には、厚生労働省令で定めるところにより、必要な説明をするよう努めなければならない。

厚生省告示第370号

食品、添加物等の規格基準 (昭和34年厚生省告示第370号)
第3 器具及び容器包装

A. 器具若しくは容器包装又はこれらの原材料一般の規格

5. 器具又は容器包装は、食品衛生法施行規則別表第1に掲げる着色料以外の化学的合成品たる着色料を含むものであつてはならない。ただし、着色料が溶出又は浸出して食品に混和するおそれのないように加工されている場合はこの限りでない。…

8. 食品衛生法施行令第1条に規定された材質の原材料であつて、これに含まれる物質ごとに定める当該原材料を使用して製造される器具若しくは容器包装に含有されることが許容される量又は器具若しくは容器包装から溶出し、若しくは浸出して食品に混和することが許容される量は、別表第1のとおりとする。ただし、着色料として使用される場合にあつてはこの限りでない。なお、別表第1に掲げる原材料であつて、これに含まれる物質は、次に定めるところによらなければならない。…

出典:食品用器具及び容器包装の規制の在り方に関する技術検討会 資料

色材の取り扱いについて

食品用器具及び容器包装の規制の在り方に関する技術検討会第5回(2018年12月07日)

色材について
 色材は、管理対象であるべきだが、業界でまさに取り組んでいる最中のものであり、現在進行形の部分も含んでいるのが現実。今後、3年から5年程度を要すると一般的に考えている。
 現行の告示における管理及び国際整合性を踏まえ、現行の告示(昭和34年厚生省告示第370号)において規定される着色料に関する管理方法と同等の考え方を維持し、

1. 食品衛生法施行規則別表第1に掲げる着色料
2. 溶出又は浸出して食品に混和するおそれのないよう加工されている場合における着色料

として包括的に管理する。

出典:食品用器具及び容器包装の規制の在り方に関する技術検討会 資料

これまでに厚生労働省に寄せられた主な質問に関する説明

Q&A(抜粋) 質問①:着色料はリスト化される必要があるのか?

 着色料は、合成樹脂のポジティブリスト制度の対象ですが、これまでのリスク管理方法(指定添加物以外の化学合成着色料は溶出又は浸出して食品に混和しないように加工されている)と同等の考え方で管理されている場合における着色料という形で、包括的に管理(指定)することとしています。そのため、個別の物質名がリスト化されていなくても包括指定の範囲内で使用可能です。ポジティブリスト案では、着色の目的で使用される物質のうち、着色以外の目的でも使用される物質が個別にリスト化されています。

Q&A(抜粋) 質問②:着色料には表面処理剤も含まれるのか?

 着色料としては、顔料の原体に表面処理等が行われたものが一体として着色の目的で機能しているものと認識しており、表面処理剤等を含む全体を着色料として取り扱うものと考えています。ただし、マスターバッチ等における着色料以外の物質(基ポリマーや分散剤等)は、個別にポジティブリストへの収載が必要です。

出典:食品用器具・容器包装のPL公示に係る資料集 石動正和氏

食品衛生法施行規則別表第1に掲げる着色料
食用赤色2号(別名アマランス)及びそのアルミニウムレーキ
食用赤色3号(別名エリスロシン)及びそのアルミニウムレーキ
食用赤色40号(別名アルラレッドAC)及びそのアルミニウムレーキ
食用赤色102号(別名ニユーコクシン)
食用赤色104号(別名フロキシン)
食用赤色105号(別名ローズベンガル)
食用赤色106号(別名アシッドレッド)
食用黄色4号(別名タートラジン)及びそのアルミニウムレーキ
食用黄色5号(別名サンセットイエローFCF)及びそのアルミニウムレーキ
食用緑色3号(別名ファストグリーンFCF)及びそのアルミニウムレーキ
食用青色1号(別名ブリリアントブルーFCF)及びそのアルミニウムレーキ
食用青色2号(別名インジゴカルミン)及びそのアルミニウムレーキ
L−アスコルビン酸(別名ビタミンC)
β−カロテン(別名β−カロチン)カンタキサンチン
銅クロロフィル
二酸化チタン
三二酸化鉄(別名三酸化二鉄又はベンガラ)

ポジティブリスト(PL)制度

日本のPL制度

  • 範囲は合成樹脂まで
  • 「ゴム」は「熱可塑性を持たない高分子の弾性体」とし、合成樹脂とは区別する。
  • 「ゴム」を除く部分については合成樹脂として取り扱い、PL制度の対象とする。

出典:食品用器具及び容器包装の規制の在り方に関する技術検討会 資料
   食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度の最新動向について 

PLの再整理

対象物質を以下のものとする

  • 合成樹脂を基本と成すもの(基ポリマー:別表第1第1表)
  • 合成樹脂の物理的又は化学的性質を変化させるために最終製品中に残留することを意図して用いられる物質(添加剤等:別表第1第2表)

添加剤等について

  • 添加剤のうち、着色の目的に限って使用される着色剤は、従前より、食品、添加剤等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)第3 器具及び容器包装の部A 器具若しくは容器包装又はこれらの原材料一般の規格の第5項の規定があることから、別表第1第2表に規定しない。
別表第1第2表の再整理
改編のイメージ
第1表(基材)第2表(添加剤)PLによる管理対象外別規格
・合成高分子物質
・合成高分子物質(化学反応を伴う塗膜)
・合成高分子物質(常温液体等)
・生成された天然由来物質
・有機低分子物質
・食品添加物(一括収載)
・微量モノマー
未精製の天然物
・天然高分子物質
・無機物質
・塗布用途の物質
着色料

現行PLの対象外となる物質

合成樹脂の原材料に該当しない物質

  • 熱可塑性を持たない弾性体(ゴムの原材料に該当する物質)
  • 無機物質(金属、非金属、岩石、土砂)
  • 天然物(特定の成分のみを精製して得られた物質または物質群を除く)またはその化学反応物(抽出物、エキス、ロジン、ナフサ等の抽出物、蒸留物、残留物等)
  • 天然物由来の有機高分子物質またはその化学反応物(デンプン、タンパク質等)
  • 器具・容器包装から放出され、食品に移行して作用することを目的とする物質
  • 帯電防止、防曇等を目的として、器具・容器包装の原材料等の表面に付着させる液体状または粉体状の物質(塗布剤)
  • 原材料に含まれる物質が化学的に変化して生成した物質
  • 食品に接触しない物質に使用された物質であって人の健康を損なうおそれのない量を超えて溶出又は浸出するおそれがない物質

出典:食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度の最新動向について 

米国のPL制度

 合成樹脂及び紙・ゴムについて、1958年から連邦規則集に掲載された化学物質のみが使用できるポジティブリスト制度。合成樹脂については、ポリマーの種類ごとに、使用可能なモノマー、添加剤やその含有量が規定。
 これに加え、2000年から、承認の迅速性を図るため、個別製品ごとに申請者に限定して使用可能とする制度(食品接触物質上市前届出制度(FCN))が新設された。
 原材料事業者を含め、適正製造規範(GMP)のもとで製造されることが要求されているが、事業者間の情報伝達に関する特段の規定はなく、自主管理・自己宣言に任されている。

欧州(EU)のPL制度

 合成樹脂について、2010年からポジティブリスト制度。モノマー、添加剤ごとに、溶出量や使用条件等が規定されている。また、製品及びその材料を構成する成分の総溶出量についても規定されている。
 原材料事業者を含め、適正製造規範(GMP)に従った製造を義務づけるとともに、事業者間の情報伝達のため、適合宣言書の製品への付帯が義務づけられている。

出典:食品用器具及び容器包装の規制の在り方に関する技術検討会 資料

米国と欧州のポジティブリスト(PL)制度の違い

色材業界の自主規制

印刷インキ工業連合会 NL 規制

 印刷インキ工業連合会が制定する「印刷インキに関する自主規制」である。

※NL:ネガティブリスト

NL 規制物質

 印刷インキ及びその関連製品の原材料として、意図的に使用することを禁止した物質である。発がん性物質など国内外の規制物質を選定し、印刷インキの原材料への使用を制限している。有機顔料より副生するPCB、HCBなどの不純物は、意図的に使用していないことから規制より外れる。

NL規制物質(顔料関係抜粋)
クロム酸及びその塩
コバルト及びその無機化合物
ニッケル化合物
鉛化合物
セレン化合物
カドミウム化合物
アンチモン化合物
水溶性バリウム化合物
ローダミン化合物
メチルバイオレット
PR8、PR22、PR23、PR38 など

食品接触材料安全センター

 一般財団法人 化学研究評価機構(JCII)の組織。2020年6月1日に設置された。3衛生協議会(ポリオレフィン等衛生協議会、塩ビ食品衛生協議会、塩化ビニリデン衛生協議会)の業務を承継(2021年4月1日)し、改正食品衛生法へ対応、政府機関との調整など、官民連携して食品接触材料管理の円滑で効率的な運用を推進することを目的としている。

2021年度 色材PLの継続・廃止について

 2021年11月19日に色材PL(継続・廃止追記)リストが会員向けに公開された。廃止された製品が多数あるので、使用している顔料製品が継続して登録されているか製造元に確認したほうが良いだろう。

ポリオレフィン等衛生協議会(ポリ衛協;JHOSPA)の承継について

安全評価基準(抜粋)

 色材における新規物質の評価に必要な資料

  • 基本的事項
    • ①色材の名称(一般名、CAS No.、C.I.Name等、化審法No.、化学式)、②色材の特性(色材を特徴づけるスペクトル、融点、溶解度、推定される不純物、急性毒性LD50)、③品質規格
  • 使用条件
    • ①対象樹脂、②最大添加量、③食品分類、④最高使用温度、⑤最長使用期間又は時間、⑥使用上の最大厚み、⑦最終製品(器具・容器包装)の形態 
  • 安全評価に関する試料
    • ①溶出試験データ、②色材の毒性データ、③①②が英文の場合は原文とその和訳
  • 色材PLへの商品名の収載に関する試料
    • 別に定める色材の規格試験(色材試験法)に適合していることを示す資料

色材試験法

  • 重金属試験
    • 含有量:下記の規格基準以下の値を合格とする。
       鉛:0.01%、カドミウム:0.01%、ヒ素:0.005%、水銀:0.005%
    • 溶出量:下記の規格基準以下の値を合格とする。
       セレン:0.01%、バリウム:0.01%、クロム:0.1%、アンチモン:0.025%
  • 遊離アミン試験(有機色材のみ) 試験対象の吸光度とアニリンの吸光度を比較する。
    • 遊離アミン含有量(アニリン換算) 下記の規格基準以下の値を合格とする。
       遊離アミン:0.05% 
  • 不純物試験(カーボンブラックのみ)
    • 国際カーボンブラック協会 ICBA法 下記の規格基準以下の値を合格とする。
       トルエン抽出物:0.1%、ベンツ(a)ピレン:250ppb 
  • 溶出試験
    • 試験片:色材を合成樹脂に混錬⇒シート形成(0.5-1.0mm、500cm2以上)⇒室温24時間放置
       判定用試験液に着色を認めないこと。

参考資料

ポリオレフィン等衛生協議会(ポリ衛協;JHOSPA)

 「衛生的なプラスチック製食品用器具・容器包装を製造するために必要な原材料を十分な品質で製造・取り扱う」会員が、「販売先に対し品質を適切に保証することを、サプライチェーンを通じて連鎖させる」ことで、衛生的なプラスチック製食品用器具・容器包装の供給を実現することを目的とした組織である。

ポジティブリスト(PO-PL)

  • PL収載物質数 1,166物質(2016年3月現在)、更新はほぼ月1回ペース
  • 合成樹脂:252、添加剤及び塗布剤:663、色材:251

出典:食品用器具及び容器包装の規制の在り方に関する技術検討会 資料

自主基準

 想定される使用条件下で、溶出する物質が食品を汚染して人の健康に影響を及ぼさないかを評価確認し、 条件が満たされる器具容器包装製品の製造方法(添加量制限、適切に用途制限した出荷など)の制限を記載。

  • 条件1
    • ほとんど溶出がない。
    • 溶出があるとしても、人体に影響するほどではない(推定摂取量が耐容摂取量より少ない)。
  • 条件2
    • 量がいくら少なくとも有害性がないとは言えない発がん性(変異原性)については、
    • あると判断されていてはならない。
  • 条件3
    • 添加剤としての技術的効用の範囲内であること(食品および生物等に作用するものではないこと) 。

 評価にあたっては、改めて各種試験を行わなければならないわけではなく、同等の考え方で作成された欧米のPLも活用している。

出典:食品用器具及び容器包装の規制の在り方に関する技術検討会 資料

塩ビ食品衛生協議会(塩食恊;JHPA)

 食品衛生法の観点から、塩化ビニル樹脂、添加剤等に係る製品の安全衛生を確保するため、適切なる使用の推進と普及を図ることにより、国民衛生に寄与することを目的としている。

ポジティブリスト

  • PL収載物質数 831物質(改訂第15版)
  • 基ポリマー(A1):65、ポリマー添加剤(A2):168、可塑剤(B):79、
  • 安定剤、抗酸化剤及び紫外線吸収剤(C):253、界面活性剤(D):39、
  • 滑剤(E):81、着色剤及び充填剤(F):141、化学発泡剤など(G):5

出典:食品用器具及び容器包装の規制の在り方に関する技術検討会 資料

自主基準

 性善説に基づき、リソースの限界とこの分野のリスクの程度を考慮し工業先進国の国々の認可を尊重して設定される。

  • 米国、ドイツ、フランス、イタリア、英国、オランダ及びEUで認可された物質(不認可になったとき自主基準から消除される)
  • 日本及び上記の国々で認可された食品添加物
  • JHPAの「技術・ポジティブリスト委員会」で評価され認可された化学物質

出典:食品用器具及び容器包装の規制の在り方に関する技術検討会 資料

塩化ビニリデン衛生協議会(JHAVDC)

 塩化ビニリデンモノマーおよびポリ塩化ビニリデン(PDVC)製品についての安全衛生の確保並びに環境との調和に関する調査研究を行うとともに会員相互の啓発並びにポリ塩化ビニリデン製品の適切な普及に努め、健全な発展に寄与することを目的としている。

ポジティブリスト

  • PL収載物質数 330物質(2010年発行 第9版)
  • 基ポリマーを構成するモノマー:50、高分子添加剤:39、可塑剤:10、
  • 安定剤:53、界面活性剤:47、滑剤:52、充填剤:49、色材:30

出典:食品用器具及び容器包装の規制の在り方に関する技術検討会 資料

自主基準

衛生試験

  • 材質規格
    • 告示370号:カドミウム、鉛バリウム、塩化ビニリデンモノマー
    • 自主基準:塩ビモノマー
  • 溶出規格
    • 告示370号:重金属、蒸発残留物、過マンガン酸カリウム消費量

ポジティブリスト(PVDC製品に使用できる物質リスト)

  • アメリカ、EUで認可されている物質
  • 食品添加物として認められている物質
  • 収載基準に適合し、新たに収載が認められた物質

出典:食品用器具及び容器包装の規制の在り方に関する技術検討会 資料

日本製紙連合会

 紙・板紙・パルプ製造業の健全なる発展を図ることを目的として、主要紙パルプ会社によって構成されている製紙業界の事業者団体である。

NL 規制物質

化審法、化管法、安衛法、毒劇法、オゾン層保護法、POPs条約、PIC条約、ダイオキシン類対策特別措置法、化学兵器禁止法、REACH 付属書XVII、発がん性物質※など
※IARC(Cat.1,2A,2B)、EU(CLP Cat.1,2)、ACGIH(A1,A2,A3)
 EPA(A,B1,B2)、NTP(K,R)、日本産業衛生学会(第1群,第2群,第3群)

軟包装衛生協議会(FPHA)

 使用する原材料の衛生性を確保できるよう、食品衛生法に加え、三衛協、印刷インキ工業連合会、日本接着剤工業会、日本製紙連合会、日本ワックス工業会の衛生自主基準を遵守するよう求めている。

日本製缶協会

原材料:厚生省告示第370号、乳等省令に適合+自主的な制限
自主的な制限:
 金属材(スチール、アルミ、ハンダ)→日本工業規格(JIS)を参照
 コーティング材(塗料)、密封材(コンパウンド)→ポジティブリスト※
 ※諸外国の食品容器包装の規格基準(主に米国の連邦規則集)を参照

AP(89)1

食品に接触するプラスチック中の着色剤の使用に関する欧州評議会の議決

着色剤中の重金属や有機化合物の溶出量(含有量)が規定されている。

  • 0.1Mの塩酸における重金属の溶出量
    • Sb:0.05%、As:0.01%、Ba:0.01%、Cd:0.01%、Cr:0.1%、Pb:0.01%、Hg:0.005%、Se:0.01%
  • 1Mの塩酸における芳香族アミンの溶出量(アニリン換算の比色法)
    • 芳香族アミンの合計:500ppm
  • カーボンブラック:0.15%
  • PCBs:25ppm
  • カドミウム顔料は可能な限り減らすべき

枠組み規則 (EC) No 1935/2004

食品接触材(FCM:Food Contact Materials)を包括的に規定する。

  • 適正製造規範 2023/2006/EC(GMP法)
  • 適合宣言書(DoC)の添付
  • トレーサビリティの実施など

PIM規則 (EC) No 10/2011/EU

 プラスチックを用いた複合材料まで対象が拡大され、付属書Iでユニオンリスト(ポジティブリスト)を定めている。
 着色剤はユニオンリストに含まれていないが除外物質に該当するため、使用可能であるとの認識が一般的である。ただし、枠組み規則(EC)No1935/2004への適合を保証するため、非意図的な混入可能性(NIAS:Non-Intentionally Added Substance)などについてリスクアセスメントが要求される。

SMLとOML

 プラスチック材料や製品から1kgの食品や食品疑似溶媒への総化学物質のOMLは60mg/kgと規定されている。化学物質の毒性データによりSML値が収載されるが、特にSML値の規定がない場合は上限値の60mg/kgが適用される。

SML(Specific Migration Limit)

包装材成分から食品若しくは食品疑似溶媒への特定化学成分の移行上限量

OML(Overall Migration Limit)

印刷物を含む全ての構成材料から食品へ移行した総移行制限量

改正PIM規則(EU)2020/1245 AnnexII 1 Table1

PIM規則 重金属の特定移行量
特定移行量
物質SML mg/kg物質SML mg/kg
アルミニウム148
アンモニウムランタン0.05
アンチモン0.04不検出(検出限界値:0.01)
砒素不検出(検出限界値:0.01)リチウム0.6
バリウム1マグネシウム
カドミウム不検出(検出限界値:0.002)マンガン0.6
カルシウム水銀不検出(検出限界値:0.01)
クロム不検出(検出限界値:0.01)ニッケル0.02
コバルト0.05カリウム
5ナトリウム
ユーロピウム0.05テルビウム0.05
ガドリニウム0.05亜鉛5

クロム:六価クロムが除外されていることを証明できる場合は、3.6mg/kgとなる。

改正PIM規則(EU)2020/1245 AnnexII 2 

PIM規則 第一級芳香族アミン(PAA)の特定移行量

  • PAAの検出限界値を0.01から0.002mg/kgへ引き下げる。
  • 検出限界値は、REACH規則 AnnexXVII Appendix8 Entry43に記載されたPAAに適用される。PAA毎にそれぞれ0.002mg/kg以下が適用される。
  • REACH規則 AnnexXVII Appendix8 Entry43に記載されていないPAAは、PAAの合計が0.01mg/kg以下を満たす必要がある。

※ REACH規則 AnnexXVII Appendix8 Entry43に記載されたPAA
 →表4-4で説明する特定芳香族アミンのうち1~22までのPAAのこと

スイス条例

 スイス条例はPIM規則に類似しており、印刷インキ・コーティング剤のポジティブリストと食品用容器包装材のSMLについて規制している。ポジティブリストは付属書10に収載の物質から構成される。付属書10は、I:モノマー、II:染料及び顔料、III:溶剤、IV:添加剤、V:光開始剤の項目がある。
 本リストは、Part Aと Part Bに分類されており、Part Aは既に化学物質の毒性が既知である物質である。SMLが空欄である物質は全てSMLが60mg/kgである。Part Bは毒性が定かではない物質であるため、SMLは全て0.01mg/kgの検出限界で検出されてはいけない(ND)。Part Aに収載の物質は全て安全であると誤解されやすいが、Part Aのリストはあくまでの毒性が既知であるという意味であり、一部の化学物質のSMLはPart Bと同様にNDと設定されている。

スイス条例 付属書10

印刷物、アーティクルへのSML値
総量規制物質
物質SML mg/kg
アルミニウム1
バリウム1
コバルト0.05
5
48
リチウム0.6
マンガン0.6
ニッケル0.02
亜鉛5
芳香族一級アミン0.01

BfR ドイツ連邦リスク評価研究所

BfR 勧告書 IX 日用品で使用されるプラスチックおよび他のポリマー用着色剤

着色剤の純度規制

  • カーボンブラック
    • PIM規則の純度規制を満たさなければならない。
  • 着色剤
    • PIM規則に加えて以下の純度規制を満たさなければならない。
    • 1. 0.07N塩酸における溶出量(DIN 53770)
      • Sb:0.05%、As:0.01%、Ba:0.01%、Cd:0.01%、Cr:0.1%、Pb:0.01%、Hg:0.005%、Se:0.01%
    • 2. 第一級芳香族アミンの移行上限量
      • SML:0.01mg/kg
      • CLP規則(発がん性分類1A、1B)の場合はSML:0.002mg/kg

EuPIA 欧州印刷インキ協会

印刷インキと関連製品のNL

選定基準A

  • 急性毒性(経口、経皮、吸入):区分1、2
  • 急性毒性(吸入):区分3
  • 発がん性、生殖細胞変異原性:区分1A、1B
  • 生殖毒性:区分1A、1B(非閾値物質)
  • 特定標的臓器毒性(単回暴露):区分1

選定基準B

  • 急性毒性(経口、経皮)区分3
  • 生殖毒性:区分1A、1B(閾値が存在する場合)
  • 特定標的臓器毒性(反復暴露):区分1

選定基準C

  • Sb、As、Cd、Cr(IV)、Pb、Hg、Se由来の顔料・染料

選定基準D(染料)

  • Basic Yellow 2、Basic Orange 2、Basic Violet 14、Solvent Blue 7、Basic Brown 4
  • 可溶性アゾ染料で、体内で分解することにより、CLP規則で1A、1Bに分類される芳香族アミンになる染料

選定基準E(溶剤)

  • 2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-メトキシエチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、モノクロルベンゼン、ジクロロベンゼン、揮発性塩化炭化水素(トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、塩化メチレン等)揮発性フッ化クロロ炭化水素、2-ニトロプロパン、メタノール

選定基準F(可塑剤)

  • 塩素化ナフタレン、塩素化パラフィン、リン酸モノクレジル、リン酸トリクレジル、リン酸モノクレジルジフェニル

選定基準G(その他)

  • ジアミノスチルベンとその誘導体、2,4-ジメチル-6-ターシャリ-ブチルフェノール、4.4-テトラメチルジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、ヘキサクロロヘキサン

食品包装材における食品非接触面用インキのインベントリーリスト

 食品包装材における食品非接触面用インキに使用される原材料選択のガイドラインとして使用されてきたが、2013年をもって更新が中止された。今後は、ドイツやスイスなど各国のインキ関連の法律によって規制される。
 インベントリーリストには、フタロシアニン系顔料やジスアゾ系顔料などが物質登録されているが、一般的な顔料を全てを網羅しているわけではないので注意が必要である。

FDA (アメリカ食品医薬品局)

 FDAは食品や医薬品、さらに化粧品、医療機器、動物薬、玩具など、消費者が通常の生活を行うに当たって接する機会のある製品について、その許可や違反品の取締りなどを行っている。食品添加物に関する規則はFDA規格と呼ばれる。

Title 21, Volume 3, 21CFR178.3297

 食品容器包装等の樹脂着色に使用可能な着色剤が収載されている。

Title 21, Volume 3, 21CFR178.3297
PB15、PB15:1、PB15:2、PB15:3、PB15:4、PB28、PB29
PBr24、
PBk28
PG7、PG17
PO64
PR38、PR57:1、PR177、PR179、PR187、PR202、PR220、PR254
PV16、PV19、PV29
PY36:1、PY53、PY95、PY138、PY147、PY180、PY181、PY183、PY191、PY191:1
Barium sulfate、
Calcium carbonate、
Carbon black、
Iron oxides、
Titanium dioxide、
Zinc oxide、
Zinc sulfide、
Silica、
Aluminum silicate(China clay)、
Magnesium silicate(talc)など

FCN届出制度

※FCN:Food Contact Notifications

 21CFRに収載していない着色料は個別の認可が必要となる。2000年にFCN制度が導入され、個別製品ごとに審査が行われるようになった。申請には製造方法・溶出量・毒性データなど様々な情報が要求される。
 FCN登録には多くの費用がかかるが、認可されれば使用権限は申請者のみに限られるので、他社製品との差別化には大変有利となる。

Threshold of Regulation (TOR) Exemption

食品接触物質(FCM)の規制適用除外

 米国FDAは、規制適用外の水準(TOR水準)として食事中濃度0.5ppbを設定し、食品へ移行する又は移行すると予期されるFCMの食事中濃度がTOR水準以下の場合、食品添加物の規制の適用除外を受けられるとしている。

TOR Exemptionを受けた顔料

PG50、PY53、PBr24
使用制限:着色剤として、あらゆる種類のフードコンタクト
     ポリマーに最大2重量%まで配合可能

中国 GB9685-2016

 印刷インキ、接着剤、コーティング剤などのポジティブリストを記載している。各物質の移行上限量SML、添加量制限QMなどを定めており、食品容器包装材の溶出試験を義務付けている。GB9685-2008に比べて収載されている添加剤の数が増加し、新たにFCA No.が付与されている。

着色剤に対する重金属の制限値

Sb:0.05%、As:0.01%、Ba:0.01%、Cd:0.01%、Cr(VI):0.1%、Pb:0.01%、Hg:0.005%、Se:0.01%
不純物の制限値→PCB:25ppm、Total PAA(アニリン換算):500ppm

顔料に関わるその他の規制と対応

EN71 (Safety of toys:玩具の安全性)

玩具の安全性に関する文書EN71は以下の通り分類されている。

  • Part 1:機械的および物理的性質
  • Part 2:可燃性
  • Part 3:特定元素の移行
  • Part 4:化学および関連活動に関する実験器具
  • Part 5:実験器具以外の化学玩具
  • Part 6:—
  • Part 7:フィンガーペイント-要件および試験方法
  • Part 8:家庭用アクティビティトーイ(活動玩具)
  • Part 9:有機化合物-要求事項
  • Part 10:有機化合物-試料作成及び抽出
  • Part 11:有機化合物-分析方法
  • Part 12:N-ニトロソアミン および N-ニトロソ化可能物質
  • Part 13:嗅覚ボードゲーム、化粧品キット及び味覚ゲーム

EN71 Part3 (特定元素の移行)

 6歳以下の小児用として設計された玩具のうち、なめたり呑み込んだりする可能性のある部品について規定されている。

EN71 Part3(1995)からEN71 Part3(2013)へ改定(カテゴリⅠ~Ⅲに分類)

  • カテゴリⅠ:乾燥している、もろい、パウダー状又は柔軟な材料
  • カテゴリⅡ:液体又は粘性のある材料
  • カテゴリⅢ:かきとることができる材料
  • 対象金属が8元素(1995)から17元素19項目(2013)へ増加
  • 19項目3カテゴリそれぞれの溶出量限度値が設定
  • 元素の移行テストは塩酸による溶出試験によって行われる。

玩具への使用制限を有する顔料

無機顔料

黄鉛、バーミリオン、カドミ系顔料、複合酸化物系顔料、など

有機顔料

バリウムレーキ顔料、マンガンレーキ顔料、ニッケル錯体顔料、銅フタロシアニン系顔料、など

※EN71は最終製品における溶出試験で結論を出すべきであり、顔料自体の元素含有量だけで使用の可否を判断できない。

EN71 Part3 対象金属の溶出量の限度値
限度値の単位:mg/kg
金属元素 19 項目カテゴリⅠカテゴリⅡカテゴリⅢ
アルミニウム2,25056028,130
アンチモン4511.3560
ヒ素3.80.947
バリウム1,50037518,750
ホウ素1,20030015,000
カドミウム1.30.317
三価クロム37.59.4460
六価クロム0.020.0050.053
コバルト10.52.6130
622.51567,700
2.00.523
マンガン1,20030015,000
水銀7.51.994
ニッケル7518.8930
セレン37.59.4460
ストロンチウム4,5001,12556,000
スズ15,0003,750180,000
有機スズ0.90.212
亜鉛3,75093846,000

特定芳香族アミン(PAA)に係る規制

AP(89)1

食品に接触するプラスチック中の着色剤の使用に関する欧州評議会の議決

着色剤中の重金属と一部有機化合物の含有量の規制値を規定
PAAはアニリン換算で測定される。

アミンの制限値

  • Total Aromatic Amines:500mg/kg
  • Unsulphonated Aromatic Amines:500mg/kg
  • Benzidine/2-naphthylamine/4-aminobiphenyl:10mg/kg

ドイツ日用品規制

特定のアゾ染料および顔料が対象
繊維製品など皮膚に直接、長期間接触する製品への使用を禁止
アゾ染料および顔料から還元的に生成するPAAについて規制

アミンの制限値

  • PAA 20種類:30µg/g以下
  • 76/769/EECの改正(EU Directive 2002/61/EC)でPAA 2種類が追加

ETAD(染料・有機顔料製造者生態学毒性学協会)報告

 ETADの報告によると、ドイツ日用品規制の対象となる顔料はPR8、PR22、PR38の3点である。また、この報告の中で

『捺染を行う条件下においてPBk7とPO13またはPO34の組み合わせは、特定芳香族アミンである3,3′-Dichlorobenzidineを放出し、その量はPBk7の質と量に依存している。』

という情報を発信しているので注意していただきたい。

ドイツ日用品規制に係わるアゾ系有機顔料の確認試験結果(ETAD)
C.I.NameCAS No.結果C.I.NameCAS No.結果C.I.NameCAS No.結果C.I.NameCAS No.結果
Yellow 126358-85-6AYellow 12114569-54-1CRed 76471-51-8COrange 36410-15-7C
Yellow 135102-83-0AYellow 12467828-22-2CRed 86410-30-6BOrange 133520-72-7A
Yellow 145468-75-7AYellow 12690268-23-8ARed 176655-841COrange 146837-37-2C
Yellow 174531-49-1AYellow 12768610-86-6ARed 226448-95-9BOrange 156358-88-9C
Yellow 492904-04-3CYellow 15231775-20-9CRed 376883-91-6COrange 166505-28-8A
Yellow 556358-37-8AYellow 17031775-16-3CRed 386358-87-8BOrange 3415793-73-4A
Yellow 6314569-54-1CYellow 17153815-04-6CRed 416505-29-9COrange 3515793-73-4A
Yellow 835567-15-7AYellow 17276233-80-2CRed 426358-90-3COrange 3715793-73-4A
Yellow 83:115110-84-6CYellow 17478952-72-4ARed 1146358-47-0COrange 4417453-73-5C
Yellow 8715110-84-6CYellow 17690268-24-9ABlue 2510127-03-4COrange 6376233-79-9C
Yellow 11468610-87-7CBlue 265437-88-7CGreen 1061725-51-7C
  • A:第5次改正政令で、日用品規制に抵触する可能性が低いと判断されるもの→白物質
  • B:第5次改正政令で、日用品規制に抵触する可能性が高いと判断されるもの→黒物質
  • C:試験データが得られていないもの
特定芳香族アミンを原料としているアゾ顔料
原料アミンC.I.NameCAS No.結果原料アミンC.I.NameCAS No.結果
3,3′-Dichlorobenzidine
CAS No. 91-94-1

Orange 133520-72-7A2-Amino-4-nitrotoluene
CAS No. 99-55-8

Red 86410-30-6B
Orange 3415793-73-4A
Red 386358-87-8BRed 176655-841C
Yellow 126358-85-6A
Yellow 135102-83-0ARed 226448-95-9B
Yellow 145468-75-7A
Yellow 174531-49-1A3,3′-Dimethoxybenzidine
CAS No. 119-90-4

Blue 2510127-03-4C
Yellow 556358-37-8A
Yellow 835567-15-7AOrange 166505-28-8A
Yellow 8715110-84-6C
Yellow 12467828-22-2CRed 416505-29-9C
Yellow 15231775-20-9C
Yellow 17031775-16-3C
Yellow 17276233-80-2C

Oeko-Tex Standard 100

繊維製品の安全性自主基準であり、PAA24種類が規制対象となっている。

アミンの制限値

  • PAA 24種類:定量下限値20µg/g

BfR 勧告書 IX

日用品用途プラスチックの色材に関する規制
紙ナプキン中に発がん性のo-アニシジンが検出されたのを契機に法制化された。

アミンの制限値(疑似食品への移行値)

  • 全PAAsで10ppbの検出限界でND
  • CMR 1A,1Bの個別PAAに関して2ppbの検出限界でND

PIM規則

芳香族一級アミンの総溶出量(SML)について規定あり

アミンの制限値

  • 芳香族一級アミン SML:0.002mg/kg

スイス条例

芳香族一級アミンの総溶出量(SML)について規定あり

アミンの制限値

  • 芳香族一級アミン SML:0.01mg/kg

家庭用品規制法

 平成28年4月1日から家庭用品規制法において特定芳香族アミンの規制が始まった。この規制の対象は繊維製品・革製品の直接肌に接触する部分であり、物質としてはアゾ染料に限定しており、顔料は除外されている点に注意が必要である。

アミンの制限値

  • 顔料は対象外

ETAD 212法

 スイスのバーゼルに拠点を構えるETAD(染料・有機顔料製造者生態学毒性学協会)では、アニリン換算で測定を行うAP(89)1法の問題点を改善した新たなPAAの分析方法としてETAD212法を検討している。
 化成品工業協会で行われた事務局長のウォルター氏のセミナーでは、顔料メーカー各社の協力のもと分析方法が最終調整段階に入ったとの報告があった。

特定芳香族アミン24種
No.成分名CAS No.構造IARCNo.成分名CAS No.構造IARC
14-aminobiphenyl92-67-11134,4’-methylenedi-o-toluidine838-88-02B
2benzidine92-87-5114p-cresidine120-71-82B
34-chloro-o-toluidine95-69-22A154,4’-methylene-bis-(2-chloro-aniline)101-14-41
42-naphthylamine91-59-81164,4’-oxydianiline101-80-42B
5o-aminoazotoluene97-56-32B174,4’-thiodianiline139-65-12B
65-nitro-o-toluidine99-55-8318o-toluidine95-53-41
74-chloroaniline106-47-82B192,4-diaminotoluene95-80-72B
82,4-Diaminoanisole615-05-42B202,4,5-trimethylaniline137-17-73
94,4’ -diaminodiphenylmethane101-77-92B21o-anisidine90-04-02B
103,3’-dichlorobenzidine91-94-12B224-aminoazobenzene60-09-32B
113,3’-dimethoxybenzidine119-90-42B232,4-xylidine95-68-13
123,3’–dimethylbenzidine119-93-72B242,6-xylidine87-62-72B

Proposition65

 カリフォルニア州法プロポジション65は、人体へ有害な化学物質が暴露することを防止するめに、飲料水の水源へ有害な化学物質が混入防止すること、人への有害な化学物質を暴露することを防止することを目的として1986年11月にアメリカのカリフォルニア州で施行された法律である。
 発がん性や生殖毒性などに懸念のある1,000種ほど化学物質が収載されており、その一部に「有意なリスクの無いレベル、最大許容量レベル」の値が付与されているのみで「閾値」は存在しない点に注意が必要である。

Proposition65 対象物質(顔料関係抜粋)
芳香族アミン
多環芳香族炭化水素
カドミウム化合物
六価クロム
鉛化合物
ニッケル化合物
HCB
PCB
カーボンブラック
二酸化チタン、など

輸出関連規制

輸出貿易管理令・外国為替令

 軍事転用の可能性が高い貨物や技術に該当する場合、事前に経済産業大臣の許可を受ける必要がある。

リスト規制

  • 輸出しようとする貨物
    • 輸出貿易管理令・別表第1の1~15項で指定
  • 提供しようとする技術
    • 外国為替令・別表の1~15項で指定
リスト規制の項目 別表第1・別表(1の項から15の項まで)
01. 武器08. 電子計算機
02. 原子力09. 通信
03. 化学兵器10. センサ
03の2. 生物兵器11. 航法装置
04. ミサイル12. 海洋関連
05. 先端素材13. 推進装置
06. 材料加工14. その他
07. エレクトロニクス15. 機微品目

キャッチオール規制

別表第1・別表:16の項

 リスト規制の対象以外のものについて軍事転用のおそれがあることを輸出者が知った場合、輸出又は提供に当たって経済産業大臣の許可が必要となる制度。
 キャッチオール規制の対象品かどうかはHSコード上二桁により判断する。

関税定率法別表(HSコード上2桁に相当する)

 第25類~第40類、第54類~第59類、第63類、第68類~第93類、第95類 ※顔料は概ね32類に該当

HSコード

HSコードとは?

関税定率法「別表 関税定率表」に記載の6桁の数字のこと。
関税定率法は輸入の際の関税率等を定めているもので、HSコードは税関への輸出申告の際にも用いられる。

顔料等のHSコード

  • 有機顔料(クルード含む) 3204.17-100
  • レーキ顔料 3205.00-000
  • 複合酸化物系顔料、紺青 3206.49-000
  • カーボンブラック 2803.00-000
  • 二酸化チタン(80%以上含有) 3206.11-000
  • 二酸化チタン(80%未満含有) 3206.19-000
  • 酸化鉄 2821.10-000
  • 顔料分散体 3204.17-900

原産地規則

 原産地規則とは、輸出入される産品が当該締約国の原産品として認められるための規則。

原産品認定3基準

  • 完全生産品
    • 農水産品、鉱物資源など
  • 原産材料のみから生産される産品
    • 生産に直接使用された材料の全てが原産材料であるもの
  • 品目別原産地規則(PSR)を満たす産品
    • 関税分類変更基準、付加価値基準、加工工程基準

原産地基準

  • 関税分類変更基準
    • 非原産材料と最終産品との間に特定の関税分類(HSコード)の変更があること。
  • 付加価値基準
    • 非原産材料に、一定以上の付加価値を付与すること。
  • 加工工程基準
    • 非原産材料に特定の加工(例:化学品の化学反応)がなされること。

顔料の原産地基準

  • 関税分類変更基準
    • 無機顔料・アゾ系顔料が該当する。
      第28類の無機化学品・第29類の有機化学品から第32類の顔料へ変更するため。
  • 付加価値基準
    • 顔料の高付加価値品・分散加工品へ適用できる可能性がある。
      原材料へ労務費、製造経費などの付加価値を投入するため。
  • 3. 加工工程基準
    • シアニン系顔料へ適用できる可能性がある。
      第32類の化学品を「精製」、「粒径の変更」するため。

加工工程基準

化学品の加工工程基準の例

 品目別原産地規則(PSR)でどのような加工工程を経れば原産品として認められるかが定められており、例えば第27類~ 第39類の化学品については、「化学反応」、「精製」、「混合及び調合」、「粒径の変更」などが規定されているものがある。

シアニン系顔料

 第32類のクルード(粗顔料)を硫酸精製し、粒径を変更する工程を経て第32類のシアニン顔料を製造するため、加工工程基準を適用できる場合がある。

日・欧 経済連携協定(EPA)

経緯

日本側は、2018年12月8日に本協定を国会承認。
EU側は、2018年12月20日に理事会で承認。
 ⇒12月21日に,日欧双方は本協定発効のための国内手続を完了した旨を通告。本協定は2019年2月1日に発効。

関税

日→欧(EU)間の工業製品に関する輸出関税100%撤廃

日・英 経済連携協定(EPA)

経緯

日本側は、2020年12月4日に本協定を国会承認。
英国側は、2020年12月7日に英国議会で承認。
 ⇒本協定は2021年1月1日に発効。

関税

工業品では輸出入の双方で品目数・金額ベースとも100%関税を撤廃

地域的な包括的経済連携(RCEP)協定

経緯

日本、ブルネイ、カンボジア、ラオス、シンガポール、タイ、ベトナム、豪州、中国、NZの10か国(2022年1月1日発効)
韓国(2022年2月1日発効)
マレーシア(2022年3月18日発効)

関税

工業製品:約92%の品目の関税撤廃、中国・韓国の無税品目の割合が上昇
農林水産品:中国等との間で輸出関心品目について関税撤廃

米国再輸出規制(EAR)

※EAR:Export Administration Regulations

米国からDual-Useのアイテムを海外へ輸出する時に適用される。
米国以外の国から第三国へ再輸出する時にも適用されるため、米国製品を扱う日本企業も注意を払う必要がある。

Dual-Use

軍事用に転用可能な二重用途品といわれるもの アイテム:貨物(汎用品)、ソフトウェア、技術のこと

EARの対象

米国内にあるもの

  • 米国にあるすべての品目

米国外にあるもの

  • 米国で生産された品目、米国原産品目
  • 外国製品で、特定の割合を超えて米国規制品目が含まれている製品
  • 外国製品で、特定の米国規制技術が使用されている製品

その他

  • 米国人・米国人以外の外国人の特定の活動
  • 技術やソースコードの外国人への移転

EAR 語句説明

CCL:Commerce Control List

  • 規制品目リストのことで、カテゴリー0~9まで分類されている。
  • 化学物質はカテゴリー1である。

ECCN:Export Control Classification Number

  • 規制品目リスト(CCL)に登録されている品目分類番号

EAR99:ECCN番号(リスト外規制品目)

  • CCL カテゴリー1に「顔料」という項目は確認できない。→一般的に顔料は「EAR99」であると思われる。
  • EAR99のほとんどは輸出や再輸出にあたって許可不要だが、制裁国、テロ支援国などへ輸出や再輸出する場合には、許可が必要な場合がある。

責任ある鉱物調達 責任ある鉱物イニシアチブ(RMI、旧CFSI)

責任ある鉱物調達

第1段階 米国ドッドフランク法(DFA)

  • 対象地域:コンゴ民主共和国(DRC)+周辺9ヶ国
  • 対象リスク:武力勢力の資金源を規制
  • 対象鉱物:スズ、タンタル、タングステン、金(3TG)

第2段階 EU紛争鉱物規則 (EU)2017/821

  • 対象地域:紛争地域および高リスク地域(CAHRAs)
  • 対象リスク:OECD AnnexIIベース(児童労働を含む人権侵害全般)
  • 対象鉱物:スズ、タンタル、タングステン、金(3TG)

第3段階 対象リスク・鉱物のさらなる拡大

  • EU紛争鉱物規則の見直し(2023年?)
  • コバルト、雲母(マイカ)も対象へ

製錬所の監査プロトコル(RMAP)に影響を与える規制

米国OFAC規制

 米国の財務省外国資産管理室(OFAC)が、外交政策・安全保障上の目的から、米国が指定した国・地域や特定の個人・団体との 直接的 間接的な取引の禁止や資産凍結などの措置を講じる規制。

ロシア・ウクライナ情勢

 RMIは相互認証しているLBMAが対ロ制裁のため認証を一時停止したロシアの金精製所6社をRMAP適合リストから削除(2022年3月現在)。

米国ウイグル強制労働防止法

 米国議会において、ウイグル製品の輸入を原則禁止する「ウイグル強制労働防止法」が成立(2022年6月21日より措置適用開始)。

EU電池規則

 EUは、従来のバッテリー指令を改正する規則案を2020年12月10日に公表。2022年前期に批准される見込み。コバルト、天然黒鉛、ニッケル、リチウムとその化合物を対象とするとともに、評価すべきリスクが多様。

出典:「責任ある鉱物調達」対応の背景と調査実務 JEITA資料

対象鉱物の拡大(今後の予定されているもの)

対象金属・鉱物(22種類)
アルミニウム、アルミナ、ボーキサイト、コバルト、銅、、黒鉛、鉄鉱石、鉛、リチウム、雲母、モリブデン、ニッケル、パラジウム、プラチナ、希土類元素、銀、鋼、タンタルスズタングステン、亜鉛

報告義務判断のポイント

報告義務の要件

 紛争鉱物が「製品製造または製品機能に必要な場合」に報告義務が発生する。

判断のポイント

「意図的」の場合は、微量であっても報告義務が発生する。

「非意図的」の場合は、純度の問題で偶然に入ってしまっていても報告義務は発生しない。

ナノマテリアル

欧州のナノフォーム定義

 ナノフォームは非結合状態の、あるいは強い結合状態(アグリゲート)または弱い結合状態(アグロメレート)の、天然または工業的に製造された粒子を含む物質の形態であり、1つ以上の外径が1nm~100nmの範囲にある粒子が、寸法基準の分布が50%以上であるものをいう。ただし、1つ以上の外径が1nm未満のフラーレン、グラフェンフレーク、および単層カーボンナノチューブも含む。

ナノ製品登録制度を持つ欧州諸国

 フランス、ベルギー、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンなど

欧州 勧告C(2022) 3689 finalの定義

 ナノマテリアルとは、単体で、または強凝集体や弱凝集体の中に識別可能な構成粒子として存在する固体粒子からなる天然、偶発的または製造された材料で、数ベースのサイズ分布において、これらの粒子の50%以上が下記の条件の少なくとも1つを満たしているものである。

  • (a)粒子の1つ以上の外形寸法が1nm〜100nmのサイズ範囲にある。
  • (b)粒子が、ロッド、ファイバーまたはチューブなどの細長い形状を有し、2箇所の外形寸法が1nmより小さく、他の寸法が100nmより大きい。
  • (c)粒子が板状の形状を有し、1箇所の外形寸法が 1nmより小さく、他の寸法が100nmより大きい。

 粒子数に基づく粒度分布の決定において、垂直に交わっている2箇所(以上)の外形寸法が100μmより大きい粒子は考慮する必要はない。比表面積が6m2/cm3未満のものはナノマテリアルとみなさない。

  • 「粒子」とは、定義された物理的境界を有する微小な物質の断片をいう。単一分子は「粒子」とはみなされない。
  • 「強凝集体(aggregate)」とは、強く結合したまたは融合した粒子からなる粒子をいう。
  • 「弱凝集体(agglomerate)」とは、弱く結合した粒子または強凝集体の集合体で、外部表面積が個々の構成要素の表面積の合計と同程度であるものをいう。

出典:一般社団法人東京環境経営研究所 欧州委員会による新しいナノマテリアルの定義

アメリカのナノマテリアル定義

 25℃の標準気圧下で固体であり、少なくとも1次元において1~100nmの構造を持つ弱凝集または強凝集を含めた粒子として製造または加工されており、少なくとも1つ以上の独自あるいは新規の特性を示すように製造または加工された化学物質である。この規則は、弱凝集および強凝集を含め、1~100nmのサイズを持つ粒子の質量含有率が1%未満であるよう製造あるいは加工された化学物質には適用されない。

アメリカの定義では顔料はナノマテリアルではない!

カナダ保健省のナノ材料の作業定義

 以下に該当する製造された物質・製品、部材、成分、デバイス、構造物はすべてナノマテリアルとみなす。

  • (1)1~100 nmの外径、内部構造若しくは表面構造のいずれかを有するもの。
  • 又は
  • (2)サイズはナノスケールではないがナノスケールに特有の特性/現象を示すもの。

スイスのナノマテリアル定義

 ナノマテリアル:1つ以上の外径が1~100nmの範囲にある、非結合状態、凝集体、または体積基準の比表面積が60m2/cm3以上である粒子を含む材料。前記の粒子形態から生じる特性を利用するために特別に製造される場合にのみ、ナノマテリアルであるとみなされる。フラーレン、グラフェンフレーク、単層カーボンナノチューブなど、1つ以上の外径寸法が1nm以下のものをナノマテリアルと呼ぶ。

オーストラリアのナノマテリアル定義

工業化学品法 第5条
 ナノスケールとは粒子径が1~100nmのことである。

工業化学品法 第7条
 以下の工業化学品

  • (1)固体または分散状態で上市されるもの。
  • (2)非結合状態あるいは凝集体(アグロメレートまたはアグリゲート)の粒子で構成され、少なくとも1辺がナノスケールであるものが個数粒度分布で50%以上となるもの。

韓国のナノマテリアル定義

化評法施行令 第2条第7号
 ナノマテリアルとは次に該当する物質をいう。

  • (1)外径の1辺の大きさが1~100nmで個数粒度分布で50%以上ある物質。
  • (2)外径の1辺の大きさが1nm以下であるフラーレン、グラフェンフレーク、又は単層カーボンナノチューブ。

台湾のナノマテリアル定義

国際的なナノマテリアルに関する定義を参考にし、下記のように制定する。

  • (1)意図的に生産されたか:意図的に生産された材料で、少なくとも100nm未満外径を1辺有し、凝集及び凝結を含む。
  • (2)サイズ(スケール):1~100nm又は100nm以下。
  • (3)次元:ナノスケールである粒子径を少なくとも1次元持つ。
  • (4)含有割合:ナノ粒子が50%以上の個数粒度分布を持つ。

顔料はナノ物質か?

顔料におけるナノ測定の問題点

 ナノマテリアル(ナノフォーム)かどうかの判断は顔料結晶1つの大きさを確認する必要がある。しかし顔料結晶は一般的に凝集しており、粒度分布や比表面積では、顔料結晶1つの大きさを測定できない。このためTEM(透過型電子顕微鏡)画像を確認することで主観的に判断するしかない。
 しかしながら… 2020年1月1日よりREACH登録時にナノフォーム物質は、ナノ情報を提出することが必要になる。また、登録済み物質についても登録情報の更新が必要となる。

REACH登録 ナノフォーム物質のドシエ更新

ナノフォームの同定に必要な情報(REACH規則 附属書Ⅵ 2.4)

  • 物質の名称、他の同定情報
  • 1nm~100nmの範囲の数平均の寸法分布
  • 表面の官能性、表面処理剤している場合のその名称
  • 形態、アスペクト比、他の構造的な特性
    • 球状:アスペクト比が3.1未満のもの
    • 棒状:アスペクト比が3.1以上のもの
    • 板状:一辺が他辺に比べて十分に短いもの
    • 上記の3種の形態が混在するもの
  • 表面積、比表面積
  • 分析方法、計算方法

出典:一般社団法人東京環境経営研究所 REACHにまつわる話 ~ナノ物質登録で要求される情報について~

その他

労働基準法

労働基準法施行規則別表第一の二第四号 1

 労働基準法において、業務上の疾病について関連性のある化学物質を厚生労働大臣が定めることとなっている。厚生労働大臣が指定する化学物質及び化合物は、無機の酸及びアルカリ、ハロゲン及びその無機化合物、芳香族化合物など多岐にわたる。

労働基準法 厚生労働大臣が指定する化学物質及び化合物(顔料関係抜粋)
アンチモン及びその化合物鉛及びその化合物
カドミウム及びその化合物ニッケル及びその化合物
クロム及びその化合物バナジウム及びその化合物
コバルト及びその化合物マンガン及びその化合物
セレン及びその化合物

中国 危険化学品の取り扱い

 中国における危険化学品とは有毒性、腐食性、爆発性、燃焼性の性質を有し、人体、環境、施設に対し危害を与える化学品のことを指す。

危険化学品の登録制度

 「危険化学品安全管理条例」及び「危険化学品登録管理弁法」に基づき、危険化学品登録制度を実施し、危険化学品⽬録に記載された化学物質を⽤いて製品を製造または輸⼊する場合、当製品を危険化学品登録する必要がある。

登録対象

 「危険化学品目録2015年版」に収載された化学物質
 顔料表面処理剤:樹脂酸カルシウム(CAS No.9007-13-0)が対象

登録時期

 輸入企業は初回の輸入前に取り扱う対象危険化学品を登録

ドイツ 水に有害な物質を取り扱う設備に関する条例(AwSV)

AwSVの概要(旧VwVwS)

 ウォーターハザードクラス(WGK)には3つの区分がある。WGKはGHS分類によって評価される。

  • WGK1:弱水質危険性(TEP:0~4)
  • WGK2:水質危険性(TEP:4~8)
  • WGK3:強水質危険性(TEP:>8)

総評価点(TEP)=①危険有害性に基づく評価点+②予防的評価点
 ①H351[発がん性:区分2]→2点
  H411[水性環境有害性 長期(慢性):区分2]→6点 など
 ②急性経口・経皮毒性に関する情報なし→4点
  環境への影響に関する情報なし→8点 など

 さらに、水に対して危険が無いと判断されるときはnwg、一般的に水に対して危険があると判断されるときはawgと表現される場合もある。

混合物のウォーターハザードクラス(WGK)の決定

混合物のWGK計算方法
内容物質
(成分)
分類結果
WGK3WGK2WGK1非水質危険性
WGK3≧3%≧0.2%, <3%<0.2%
意図的添加
<0.2%
非意図的含有
WGK2≧5%≧0.2%, <5%<0.2%
WGK1≧3%<3%
非水質危険性
R45(発がん性)≧0.1%≧0.1%WGK2のもの<0.1%
意図的添加
<0.1%
非意図的含有

WGK3に分類されたアゾ顔料

水質危害物質評価委員会(KBwS)の決定

 2014年10月、以下のアゾ顔料はWGK3に分類されることになった。ドイツへ提出するSDSは、WGK3の記載が必要とされた。

  • C.I. Pigment Yellow 12 (CAS No. 6358-85-6)
  • C.I. Pigment Yellow 13 (CAS No. 5102-83-0)
  • C.I. Pigment Yellow 14 (CAS No. 5468-75-7)
  • C.I. Pigment Yellow 83 (CAS No. 5567-15-7)
  • C.I. Pigment Yellow 174 (EC No. 911-715-0)
  • C.I. Pigment Yellow 188 (CAS No. 72207-62-6)
  • DCB-AAA-AAOT (CAS No. 68910-13-4)
  • C.I. Pigment Orange 13 (CAS No. 3520-72-7)
  • C.I. Pigment Orange 34 (CAS No. 15793-73-4)

水質危害物質評価委員会(KBwS)の再分類

 その後、2021年2月の欧州ETAD「POCミーティング」において、以下のアゾ顔料は ”not hazardous to water (nwg)”へ再分類されることが報告された。

  • C.I. Pigment Yellow 12 (CAS No. 6358-85-6)
  • C.I. Pigment Yellow 13 (CAS No. 5102-83-0)
  • C.I. Pigment Yellow 83 (CAS No. 5567-15-7)

依然として、その他の対象顔料はドイツ向けSDSにWGK3の記載が必要となるので注意が必要である。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次