テンプレートのダウンロード
SDSの作り方を説明したいと思います。SDSのテンプレートは独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)でダウンロードできます。
SDSの記載項目を表示
項目 | 項目名 | 小項目名 | 必須又は任意の別a) |
1 | 化学品及び会社情報 | 化学品の名称 | 必須 |
製品コード | 任意 | ||
供給者の会社名称、住所及び電話番号 | 必須 | ||
供給者のファクシミリ番号又は電子メールアドレス | 任意 | ||
緊急連絡電話番号 | 任意 | ||
推奨用途 | 任意 | ||
使用上の制限 | 任意 | ||
国内製造事業者等の情報(了解を得た上で) | 任意 | ||
2 | 危険有害性の要約 | 化学品のGHS分類 | 必須 |
GHSラベル要素(絵表示又はシンボル、注意喚起語、危険有害性情報及び注意書き) | 必須 | ||
GHS分類に関係しない又はGHSで扱われない他の危険有害性 | 任意 | ||
重要な徴候及び想定される非常事態の概要 | 任意 | ||
3 | 組成及び成分情報 | 化学物質・混合物の区別 | 必須 |
化学名又は一般名 | 必須 | ||
慣用名又は別名 | 任意 | ||
化学物質を特定できる一般的な番号 | 任意 | ||
成分及び濃度又は濃度範囲(混合物の場合、各成分の化学名又は一般名及び濃度又は濃度範囲)注記 国内法令において記載が求められる場合は、化学物質名及び濃度の記載が必須である。 | 任意 | ||
官報公示整理番号(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律・労働安全衛生法) | 任意 | ||
GHS分類に寄与する成分(不純物及び安定化添加物も含む) | 任意 | ||
4 | 応急措置 | 吸入した場合 | 必須 |
皮膚に付着した場合 | 必須 | ||
眼に入った場合 | 必須 | ||
飲み込んだ場合 | 必須 | ||
急性症状及び遅発性症状の最も重要な微候症状 | 任意 | ||
応急措置をする者の保護に必要な注意事項 | 任意 | ||
医師に対する特別な注意事項 | 任意 | ||
5 | 火災時の措置 | 適切な消火剤 | 必須 |
使ってはならない消火剤 | 必須※ | ||
火災時の特有の危険有害性 | 任意 | ||
特有の消火方法 | 任意 | ||
消火活動を行う者の特別な保護具及び予防措置 | 任意 | ||
6 | 漏出時の措置 | 人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置 | 必須 |
環境に対する注意事項 | 必須 | ||
封じ込め及び浄化の方法及び機材 | 必須 | ||
二次災害の防止策 | 任意 | ||
7 | 取扱い及び保管上の注意 | 取扱い(技術的対策、安全取扱注意事項、接触回避などを記載する。また、必要に応じて衛生対策を記載することが望ましい。) | 必須※ |
保管(安全な保管条件、安全な容器包装材料を記載する。) | 必須※ | ||
8 | ばく露防止及び保護措置 | 許容濃度等 | 任意 |
設備対策 | 任意 | ||
保護具(呼吸用保護具、手の保護具、眼、顔面の保護具、皮膚及び身体の保護具) | 必須 | ||
特別な注意事項 | 任意 | ||
9 | 物理的及び化学的性質 | 物理状態 | 必須 |
色 | 必須 | ||
臭い | 必須※ | ||
融点/凝固点(混合物の場合は、記載省略可) | 必須※ | ||
沸点又は初留点及び沸点範囲 | 必須※ | ||
可燃性 | 必須※ | ||
爆発下限界及び爆発上限界/可燃限界 | 必須※ | ||
引火点 | 必須※ | ||
自然発火点 | 必須※ | ||
分解温度 | 必須※ | ||
pH | 必須※ | ||
動粘性率 | 必須※ | ||
溶解度(混合物の場合は、記載省略可) | 必須※ | ||
n-オクタノール/水分配係数(log値)(混合物の場合は、記載省略可) | 必須※ | ||
蒸気圧 | 必須※ | ||
密度及び/又は相対密度 | 必須※ | ||
相対ガス密度 | 必須※ | ||
粒子特性 | 必須※ | ||
その他のデータ(放射性、かさ密度、燃焼持続性) | 任意 | ||
10 | 安定性及び反応性 | 反応性 | 必須※ |
化学的安定性 | 必須※ | ||
危険有害反応可能性 | 必須※ | ||
避けるべき条件[熱(特定温度以上の加熱など)、圧力、衝撃、静電放電、振動などの物理的応力] | 必須※ | ||
混触危険物質 | 必須※ | ||
危険有害な分解生成物 | 必須※ | ||
11 | 有害性情報 | 急性毒性 | 必須※ |
皮膚腐食性/刺激性 | 必須※ | ||
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 必須※ | ||
呼吸器感作性又は皮膚感作性 | 必須※ | ||
生殖細胞変異原性 | 必須※ | ||
発がん性 | 必須※ | ||
生殖毒性 | 必須※ | ||
特定標的臓器毒性(単回ばく露) | 必須※ | ||
特定標的臓器毒性(反復ばく露) | 必須※ | ||
誤えん有害性 | 必須※ | ||
12 | 環境影響情報 | 生態毒性 | 必須※ |
残留性・分解性 | 必須※ | ||
生態蓄積性 | 必須※ | ||
土壌中の移動性 | 必須※ | ||
オゾン層への有害性 | 必須※ | ||
13 | 廃棄上の注意 | 化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報 | 必須 |
14 | 輸送上の注意 | 国連番号 | 該当する場合 |
品名(国連輸送名) | 該当する場合 | ||
国連分類(輸送における危険有害性クラス) | 該当する場合 | ||
容器等級 | 該当する場合 | ||
海洋汚染物質(該当・非該当) | 任意 | ||
MARPOL73/78附属書II及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質(該当・非該当) | 任意 | ||
輸送又は輸送手段に関する特別の安全対策 | 任意 | ||
国内規制がある場合の規制情報 | 必須 | ||
15 | 適用法令 | 該当法令の名称及びその法令に基づく規制に関する情報(化学品にSDSの提供が求められる特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律、労働安全衛生法、毒物及び劇物取締法に該当する化学品の場合、化学品の名称と共に記載する) | 必須 |
その他の適用される法令の名称及びその法令に基づく規制に関する情報(化学品の名称と共に記載する) | 任意 | ||
16 | その他の情報 | 安全上重要であるがこれまでの項目名に直接関連しない情報 | 任意 |
注a) 記載の説明 −必須:記載必須。 −必須※:情報がない場合、その旨を必ず記載する。 −任意:記載は任意。 −該当する場合:小項目が前提とする事柄に該当する場合にだけ記載する。 |
このテンプレートは混合物製品を例にしていますので、混合物のSDSについて説明します。
SDSの準備
私が顔料を使用している混合物製品で真っ先に思いつくものは塗料でした。ここでは白色アクリル塗料を例にします。成分は以下の通りとします。
- 二酸化チタン 60%
- アクリル樹脂 20%
- キシレン 15%
- 酢酸ブチル 5%
まず始めに行うことは各成分のSDSを集めることです。
厚生労働省が運営している職場の安全サイトで各成分のSDSを確認してみましょう。
アクリル樹脂は様々な製品が考えられますので、職場の安全サイトでは検索できません。製造メーカーのSDSを確認して安全性を調査することになります。今回は危険有害性情報の記載が無い安全なアクリル樹脂を使用しているものとしてSDSを作成してみます。
1.化学品及び会社情報
まず化学品の名称、会社名、住所及び電話番号をテンプレートに入力します。
できれば緊急連絡電話番号を入力したほうが良いでしょう。また、推奨用途及び使用上の制限は免責事項として使用できる場合がありますので、入力することをおすすめいたします。
2.危険有害性の要約
GHS分類はJIS Z 7252:2019「GHSに基づく化学品の分類方法」を参照して分類します。
しかし、この方法では内容を理解するのが大変ですので、NITEのGHS混合物分類判定ラベル/SDS作成支援システム(NITE-Gmiccs)を活用しても良いでしょう。
NITE-GmiccsのGHS分類の結果は以下のようになりました。
GHS分類結果を開く
爆発物 | 分類できない |
可燃性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
エアゾール | 区分に該当しない(分類対象外) |
酸化性ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
高圧ガス | 区分に該当しない(分類対象外) |
引火性液体 | 分類できない |
可燃性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
自己反応性化学品 | 分類できない |
自然発火性液体 | 分類できない |
自然発火性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
自己発熱性化学品 | 分類できない |
水反応可燃性化学品 | 分類できない |
酸化性液体 | 分類できない |
酸化性固体 | 区分に該当しない(分類対象外) |
有機過酸化物 | 分類できない |
金属腐食性物質 | 分類できない |
鈍性化爆発物 | 分類できない |
急性毒性(経口) | 分類できない |
急性毒性(経皮) | 分類できない |
急性毒性(吸入:気体) | 区分に該当しない(分類対象外) |
急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない |
急性毒性(吸入:粉じん、ミスト) | 分類できない |
皮膚腐食性/刺激性 | 区分2 |
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2 |
呼吸器感作性 | 分類できない |
皮膚感作性 | 分類できない |
生殖細胞変異原性 | 分類できない |
発がん性 | 区分2 |
生殖毒性 | 区分1B |
生殖毒性・授乳影響 | 分類できない |
特定標的臓器毒性(単回ばく露) | 区分あり |
特定標的臓器毒性(単回ばく露)(1) | 区分3(麻酔作用) |
特定標的臓器毒性(単回ばく露)(2) | 区分1(中枢神経系) |
特定標的臓器毒性(単回ばく露)(3) | 区分1(呼吸器) |
特定標的臓器毒性(単回ばく露)(4) | 区分1(肝臓) |
特定標的臓器毒性(単回ばく露)(5) | 区分1(腎臓) |
特定標的臓器毒性(反復ばく露) | 区分あり(分類できない) |
特定標的臓器毒性(反復ばく露)(1) | 区分1(神経系) |
特定標的臓器毒性(反復ばく露)(2) | 区分1(呼吸器) |
誤えん有害性 | 分類できない |
水生環境有害性 短期(急性) | 区分3 |
水生環境有害性 長期(慢性) | 区分3 |
オゾン層への有害性 | 分類できない |
GHS分類
全てのGHS分類を記載すると見難くなってしまいますから、「区分に該当しない」「分類できない」という項目は記載しなくても良いと思います。該当項目を除いたGHS分類の記載内容は以下のようになりました。
物理化学的危険性
- -
健康に対する有害性
- 皮膚腐食性/刺激性:区分2
- 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性:区分2
- 発がん性:区分2
- 生殖毒性:区分1B
- 特定標的臓器毒性(単回ばく露):区分1(中枢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓)、区分3(麻酔作用)
- 特定標的臓器毒性(反復ばく露):区分1(神経系、呼吸器)
環境に対する有害性
- 水生環境有害性 短期(急性):区分3
- 水生環境有害性 長期(慢性):区分3
注) 上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」に該当する。
次にGHS分類に該当するラベル要素を記載します。無料で参照できる資料としては、経済産業省が公開している「国連GHS文書改訂第6版(2015年)の仮訳」があります。
「JIS Z 7252:2019及びJIS Z 7253:2019」に対応しているSDSは、国連GHS文書(通称パープルブック)改訂第6版(2015年)を基に作られています。この資料の附属書1と附属書3で危険有害性情報のコード(Hコード)、注意書きのコード(Pコード)などを見てみましょう。もう少し簡単に参照できる資料としては【別紙】注意書きフレーズの絞り込みについて(210401更新版)があります。
皮膚腐食性/刺激性 区分2
- 絵表示:
- 注意喚起語:警告
- 危険有害性情報:皮膚刺激
- Hコード:H315
- Pコード:P264、P280、P321、P302+P352、P332+P313、P362+P364
眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2
- 絵表示:
- 注意喚起語:警告
- 危険有害性情報:強い目刺激
- Hコード:H319
- Pコード:P264、P280、P337+P313、P305+P351+P338
発がん性 区分2
- 絵表示:
- 注意喚起語:警告
- 危険有害性情報:発がんのおそれの疑い
- Hコード:H351
- Pコード:P201、P202、P280、P308+P313、P405、P501
生殖毒性 区分1B
- 絵表示:
- 注意喚起語:危険
- 危険有害性情報:生殖能または胎児への悪影響のおそれ
- Hコード:H360
- Pコード:P201、P202、P280、P308+P313、P405、P501
特定標的臓器毒性(単回ばく露) 区分1
- 絵表示:
- 注意喚起語:危険
- 危険有害性情報:中枢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓の障害
- Hコード:H370
- Pコード:P260、P264、P270、P308+P311、P321、P405、P501
特定標的臓器毒性(単回ばく露) 区分3
- 絵表示:
- 注意喚起語:警告
- 危険有害性情報:眠気またはめまいのおそれ
- Hコード:H336
- Pコード:P261、P271、P312、P304+P340、P405、P403+P233、P501
特定標的臓器毒性(反復ばく露) 区分1
- 絵表示:
- 注意喚起語:危険
- 危険有害性情報:長期にわたる、または反復ばく露による神経系、呼吸器の障害
- Hコード:H372
- Pコード:P260、P264、P270、P314、P501
水生環境有害性 短期(急性) 区分3
- 絵表示:なし
- 注意喚起語:なし
- 危険有害性情報:水生生物に有害
- Hコード:H402
- Pコード:P273、P501
水生環境有害性 長期(慢性) 区分3
- 絵表示:なし
- 注意喚起語:なし
- 危険有害性情報:長期継続的影響により水生生物に有害
- Hコード:H412
- Pコード:P273、P501
絵表示の優先順位
複数の危険有害性を持つ化学品の場合、複数の絵表示を表示することが原則ですが、健康有害性の絵表示には優先順位があります。
- 「どくろ」の絵表示はすべての「感嘆符」より優先
- 「腐食性」の絵表示は皮膚または眼刺激性の「感嘆符」より優先
- 呼吸器感作性の「健康有害性」の絵表示は皮膚感作性、皮膚または眼刺激性の「感嘆符」より優先
注意喚起語の優先順位
「危険」と「警告」いずれの文言も該当する場合は、「危険」の文言のみを表示します。
GHSラベル要素
絵表示
注意喚起語
- 危険
危険有害性情報
- H315:皮膚刺激
- H319:強い目刺激
- H351:発がんのおそれの疑い
- H360:生殖能または胎児への悪影響のおそれ
- H370:中枢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓の障害
- H336:眠気またはめまいのおそれ
- H372:長期にわたる、または反復ばく露による神経系、呼吸器の障害
- H402:水生生物に有害
- H412:長期継続的影響により水生生物に有害
注意書き
安全対策
- P201:使用前に取扱説明書を入手すること。
- P202:全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
- P260:粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
- P261:粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
- P264:取扱い後は...をよく洗うこと。
- P270:この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
- P271:屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
- P273:環境への放出を避けること。
- P280:保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
応急措置
- P312:気分が悪いときは医師/...に連絡すること。
- P314:気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
- P321:特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
- P302+P352:皮膚に付着した場合:多量の水/...で洗うこと。
- P304+P340:吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
- P308+P311:ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
- P308+P313:ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
- P332+P313:皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
- P337+P313:眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
- P362+P364:汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
- P305+P351+P338:眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
保管
- P405:施錠して保管すること。
- P403+P233:換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
廃棄
- P501:内容物/容器を...に廃棄すること。
3.組成及び成分情報
まずはじめに「化学物質・混合物の区別」を記載します。
化学物質は自然界に存在するものか、製造することで得られる元素や化合物のことです。基本的には「単一物質」のことですね。非意図的に不純物が含有していても「単一物質」と表現することになります。
混合物はその名の通り、様々な化学物質が混ざりあったもの。インクや塗料、トナーなど様々なものが考えられます。今回の事例では「白色アクリル塗料」を取り扱っていますから、「混合物」と記載することになります。
つぎに「化学名又は一般名」ですが、化学物質の場合は「化学名」をそのまま記載します。ダイヤモンドなら「炭素」ということになりますね。混合物の場合は「一般名」を記載します。今回の場合では「アクリル塗料」ですね。
「慣用名又は別名」「化学物質を特定できる一般的な番号」は任意項目ですから、一般名を伝えるより慣用名や番号を伝えるほうが、物質を特定できるなど特別な場合を除き、余り書くことはありません。
「成分及び濃度又は濃度範囲」は任意項目になっています。ここが「任意」であるという概念はとても重要です。SDSには成分情報を必ず記載しなくてはならないと勘違いしている人がとても多いです。しかし、国内法令において記載が求められる場合以外は化学物質名及び濃度の記載が必須ではありません。
では「国内法令において記載が求められる場合」とはどのような場合でしょうか?
日本のSDSは「労働安全衛生法(安衛法)」「化学物質排出把握管理促進法(化管法)」「毒物および劇物取締法(毒劇法)」の三法によって作成を求められている書類です。
このため、この三法の規制対象物質を含有しているときのみ、成分の記載が必須となるのです。
今回取り扱っている「白色アクリル塗料」の成分を見てみましょう。
白色アクリル塗料の成分
- 二酸化チタン 60%
- アクリル樹脂 20%
- キシレン 15%
- 酢酸ブチル 5%
今回の事例では、アクリル樹脂は危険有害性情報の記載は無いものとして取り扱っていますから、「二酸化チタン」「キシレン」「酢酸ブチル」の三成分についてSDS三法の対象物質になっているか調べます。
調査の方法は様々ありますが、簡単な方法は以下の2つだと思います。
- 1.各成分のSDSで確認する方法
- 2.NITE-CHRIP (NITE 化学物質総合情報提供システム)で検索する方法
各成分のSDSは「職場の安全サイト」でご確認ください。
NITE-CHRIPの検索では、主に「CAS登録番号(CAS RN)」を使用します。
CAS登録番号は、アメリカ化学会の下部組織であるCAS (Chemical Abstracts Service) が登録を行っている化学物質に固有の識別番号のことです。
CAS登録番号はSDSで確認する事が多いです。
各成分のCAS登録番号
- 二酸化チタン 13463-67-7
- アクリル樹脂 不明
- キシレン 1330-20-7(工業用を使用しているため、異性体が複数混在している)
- 酢酸ブチル 123-86-4
NITE-CHRIP→化学物質から調べる→検索条件入力<キーワード検索>番号で検索の入力→CAS登録番号を入力→検索実行
検索結果が表示されますので、安衛法、化管法、毒劇法の項目が表示されているか確認します。
二酸化チタン
- CAS登録番号:13463-67-7
- 化審法官報整理番号:1-558
- 労働安全衛生法(安衛法)
- 安衛法官報整理番号:2-(3)-509
- 名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物
- 政令番号:別表第9の191
- 表示の対象となる範囲(重量%):≧1
- 通知の対象となる範囲(重量%):≧0.1
- 化学物質排出把握管理促進法(化管法):なし
- 毒物および劇物取締法(毒劇法):なし
キシレン
- CAS登録番号:1330-20-7
- 化審法官報整理番号:3-3
- 労働安全衛生法(安衛法)
- 安衛法官報整理番号:なし
- 名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物
- 政令番号:別表第9の136
- 表示の対象となる範囲(重量%):≧0.3
- 通知の対象となる範囲(重量%):≧0.1
- 危険物:引火性の物
- 有機溶剤等(有機則):第二種有機溶剤等
- 作業環境評価基準で定める管理濃度:50ppm
- 化学物質排出把握管理促進法(化管法)
- 令和4年度分までの排出量等の把握や令和4年度末までのSDS提供の対象
- 分類:第一種
- 政令番号:1-80
- 令和5年度分以降の排出量等の把握や令和5年度以降のSDS提供の対象
- 管理番号:80
- 分類:第一種
- 政令番号:1-103
- 令和4年度分までの排出量等の把握や令和4年度末までのSDS提供の対象
- 毒物および劇物取締法(毒劇法):劇物
酢酸ブチル
- CAS登録番号:123-86-4
- 化審法官報整理番号:2-731
- 労働安全衛生法(安衛法)
- 安衛法官報整理番号:2-(6)-226
- 名称等を表示し、又は通知すべき危険物及び有害物
- 政令番号:別表第9の181
- 表示の対象となる範囲(重量%):≧1
- 通知の対象となる範囲(重量%):≧1
- 危険物:引火性の物
- 有機溶剤等(有機則):第二種有機溶剤等
- 作業環境評価基準で定める管理濃度:150ppm
- 化学物質排出把握管理促進法(化管法):なし
- 毒物および劇物取締法(毒劇法):なし
上記のように検索結果が表示されましたから、アクリル樹脂を除く三成分は、化学物質名及び濃度の記載が必須となります。
化学物質・混合物の区別:混合物
化学名又は一般名:アクリル塗料
組成物質名 | CAS登録番号 | 化管法指定化学物質の種別 | 化審法官報公示整理番号 | 安衛法官報公示整理番号 | 濃度又は濃度範囲 |
二酸化チタン | 13463-67-7 | ‐ | 1-558 | 2-(3)-509 | 60% |
キシレン | 1330-20-7 | 第一種(管理番号:80) | 3-3 | ‐ | 15% |
酢酸ブチル | 123-86-4 | ‐ | 2-731 | 2-(6)-226 | 5% |
ここでNITE-CHRIPの検索結果について補足説明をします。
1.安衛法官報整理番号について
- 二酸化チタン 2-(3)-509
- キシレン なし
- 酢酸ブチル 2-(6)-226
なぜキシレンには番号が無いのでしょうか?
理由は、「顔料と化学物質管理」の「安衛法の既存化学物質について」という項目に記載しています。安衛法には昭和54年6月29日までに製造され、又は輸入された化学物質は既存化学物質になるという決まりがあります。このため、キシレンには官報整理番号が付与されていません。
2.化管法の政令番号と管理番号について
キシレンの政令番号は令和4年度末までと令和5年度以降で変化します。
- 令和4年度末までのSDS提供の対象:1-80
- 令和5年度以降のSDS提供の対象:1-103
これは政令番号は対象となる化学物質が追加されると、あいうえお順に並び替えられることから発生する減少です。化管法は法改正によって対象となる化学物質が追加されました。このため、政令番号が変わってしまいました。
法改正のたびに政令番号が変わるためSDS作成者は毎回更新をしなければならず、大変な思いをしてきました。でも大丈夫。今回の改正では、政令番号とは別に管理番号が付与されることになりました。管理番号は法改正があっても化学物質固有の番号として保持されます。このため、今後は管理番号をSDSに記載したほうが更新の手間が省けて良いでしょう。化管法の法改正については、「顔料と化学物質管理」の「化学物質排出把握管理促進法施行令の一部を改正する政令」(令和3年10月20日公布)という項目に記載しています。
4.応急措置
では次に応急措置について記載していきましょう。
必須項目は「吸入した場合」「皮膚に付着した場合」「眼に入った場合」「飲み込んだ場合」です。
各成分のSDSで応急措置の項目を確認してみます。
二酸化チタン
- 吸入した場合
- 空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
- 症状が続く場合には、医師に連絡すること。
- 皮膚に付着した場合
- 多量の水と石けん(鹸)で洗うこと。症状が続く場合には、医師に連絡すること。
- 眼に入った場合
- 水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。症状が続く場合には、医師に連絡すること。
- 飲み込んだ場合
- 水で口をすすぎ、直ちに医師の診断を受けること。
キシレン
- 吸入した場合:
- 被災者を新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
- 医師の手当、診断を受けること。
- 気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
- 皮膚に付着した場合:
- 汚染された衣類を脱ぐこと。
- 皮膚を速やかに洗浄すること。
- 多量の水と石鹸で洗うこと。
- 皮膚刺激が生じた場合、医師の診断、手当てを受けること。
- 医師の手当、診断を受けること。
- 気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
- 汚染された衣類を再使用する前に洗濯すること。
- 目に入った場合:
- 水で数分間、注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
- 眼の刺激が持続する場合は、医師の診断、手当てを受けること。
- 医師の手当、診断を受けること。
- 気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
- 飲み込んだ場合:
- 口をすすぐこと。
- 医師の手当、診断を受けること。
- 気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
酢酸ブチル
- 吸入した場合
- 空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 医師に連絡すること。
- 皮膚に付着した場合
- 直ちに、汚染された衣類をすべて脱ぐこと、取り除くこと。皮膚を流水、シャワーで洗うこと。 気分が悪い時は、医師に連絡すること。
- 眼に入った場合
- 水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 眼の刺激が続く場合は、医師に連絡すること。
- 飲み込んだ場合
- 口をすすぐこと。 気分が悪い時は、医師に連絡すること
各成分の応急措置の項目を結集させて、ダブった項目を削除します。
吸入した場合
- 空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
- 症状が続く場合には、医師に連絡すること。
皮膚に付着した場合
- 汚染された衣類を脱ぐこと。
- 皮膚を速やかに洗浄すること。
- 多量の水と石鹸で洗うこと。
- 皮膚刺激が生じた場合、医師の診断、手当てを受けること。
- 気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
- 汚染された衣類を再使用する前に洗濯すること。
眼に入った場合
- 水で数分間注意深く洗うこと。次に、コンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。症状が続く場合には、医師に連絡すること。
- 眼の刺激が持続する場合は、医師の診断、手当てを受けること。
- 気分が悪い時は、医師の手当て、診断を受けること。
飲み込んだ場合
- 口をすすぐこと。
- 医師の手当、診断を受けること。
SDSを集結させた文言が「2.危険有害性の要約」で記載した応急措置の文言と齟齬がないか調べます。
危険有害性の要約における応急措置
- P312:気分が悪いときは医師/...に連絡すること。
- P314:気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
- P321:特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
- P302+P352:皮膚に付着した場合:多量の水/...で洗うこと。
- P304+P340:吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
- P308+P311:ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
- P308+P313:ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
- P332+P313:皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
- P337+P313:眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
- P362+P364:汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
- P305+P351+P338:眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
今回は問題ないようですので、そのまま採用します。
任意項目は専門的な知識や詳細な物質情報が必要なため、なかなか記載できるものではありません。特記したい事項があればその都度、記載しましょう。
5.火災時の措置
火災時の措置における必須項目は「適切な消火剤」「使ってはならない消火剤」です。
これは危険物規制別表第五を確認する必要があります。
今回考えている「白色アクリル塗料」は危険物なのでしょうか?
項目2において物理化学的危険性のGHS分類は「区分に該当しない」「分類できない」という判定でした。ここで文言の定義を確認します。
- 「区分に該当しない」はGHS分類を行うのに十分な情報があり、分類の結果、いずれの区分にも該当しない場合や物理的状態又は化学構造が該当しない場合が該当します。液体なのにガスや固体の項目は当てはまらないと言うことですね。
- 「分類できない」はGHS分類を行うための十分な情報がない場合が該当します。
「白色アクリル塗料」のうち物理化学的危険性の記載がある成分は、キシレンと酢酸ブチルです。いずれも引火性液体の項目に記載があります。
- キシレン 引火性液体 区分3
- 酢酸ブチル 引火性液体 区分2
なぜNITE-Gmiccsでは「白色アクリル塗料」の引火性液体の項目が「分類できない」となるのでしょうか?
理由は「白色アクリル塗料」としての引火点情報を入力していないからです。
引火性液体かどうかの判定は、引火点の値によって決まります。引火性液体は消防法の危険物第四類に該当します。
危険物第四類
- 特殊引火物:発火点が100℃以下または引火点が-20℃以下で沸点が40℃以下のもの
- ジエチルエ一テル、二硫化炭素、アセトアルデヒド、酸化プロピレンなど
- 第1石油類:引火点が21℃未満のもの
- ガソリン、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトン、ピリジンなど
- アルコール類:炭素数が1~3個の飽和1価のもの
- メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなど
- 第2石油類:引火点捗21℃以上70℃未満のもの
- 灯油、軽油、キシレン、クロロベンゼン、n-ブチルアルコール、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸など
- 第3石油類:引火点が70℃以上200℃未満のもの
- 重油、クレオソート油、アニリン、ニトロベンゼン、エチレングリコール、グリセリンなど
- 第4石油類:引火点が200℃以上のもの
- ギヤー油、シリンダー油、タービン油、可塑剤など
- 動植物油類
- ヤシ油、パーム油、オリーブ油、ヒマシ油、ナタネ油、ゴマ油、ニシン油など
SDSを見ると、キシレンの引火点は異性体それぞれで異なり、o-体:32℃、m-体:27℃、p-体:27℃となっています。酢酸ブチルの引火点は22℃です。混合物の場合は、専門の測定機関に測定をお願いして情報を収集した方が良いと思います。どうしても急ぎでSDSを作らなくてならない場合は、「JIS Z 7253:2019」の記載に「値がない場合、通常、主として混合物の引火点に寄与するものとして、最も低い引火点をもつ物質の引火点を示す。」とありますので、今回は酢酸ブチルの引火点「22℃」を採用します。
結論として「白色アクリル塗料」は危険物第四類第2石油類として取り扱うこととします。
さて、項目2において物理化学的危険性のGHS分類は酢酸ブチルの区分と同じものへ修正する必要があります。
物理化学的危険性
- 変更 引火性液体:区分2
健康に対する有害性
- 皮膚腐食性/刺激性:区分2
- 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性:区分2
- 発がん性:区分2
- 生殖毒性:区分1B
- 特定標的臓器毒性(単回ばく露):区分1(中枢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓)、区分3(麻酔作用)
- 特定標的臓器毒性(反復ばく露):区分1(神経系、呼吸器)
環境に対する有害性
- 水生環境有害性 短期(急性):区分3
- 水生環境有害性 長期(慢性):区分3
注) 上記のGHS分類で区分の記載がない危険有害性項目については、「分類対象外」、「区分外」または「分類できない」に該当する。
絵表示

注意喚起語
- 危険
危険有害性情報
- 追加 H225:引火性の高い液体及び蒸気
- H315:皮膚刺激
- H319:強い目刺激
- H351:発がんのおそれの疑い
- H360:生殖能または胎児への悪影響のおそれ
- H370:中枢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓の障害
- H336:眠気またはめまいのおそれ
- H372:長期にわたる、または反復ばく露による神経系、呼吸器の障害
- H402:水生生物に有害
- H412:長期継続的影響により水生生物に有害
注意書き
安全対策
- 追加 P210:熱、高温のもの、火花、裸火及び他の着火源から遠ざけること。禁煙。
- 追加 P233:容器を密閉しておくこと。
- 追加 P240:容器を設置しアースをとること。
- 追加 P241:防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...を使用すること。
- 追加 P242:火花を発生させない工具を使用すること。
- 追加 P243:静電気放電に対する措置を講ずること。
- P201:使用前に取扱説明書を入手すること。
- P202:全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
- P260:粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
- P261:粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
- P264:取扱い後は...をよく洗うこと。
- P270:この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
- P271:屋外又は換気の良い場所でだけ使用すること。
- P273:環境への放出を避けること。
- P280:保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
応急措置
- 追加 P303+P361+P353:皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと。皮膚を水又はシャワーで洗うこと。
- 追加 P370+P378:火災の場合:消化するために...を使用すること。
- P312:気分が悪いときは医師/...に連絡すること。
- P314:気分が悪いときは、医師の診察/手当てを受けること。
- P321:特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
- P302+P352:皮膚に付着した場合:多量の水/...で洗うこと。
- P304+P340:吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
- P308+P311:ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師に連絡すること。
- P308+P313:ばく露又はばく露の懸念がある場合:医師の診察/手当てを受けること。
- P332+P313:皮膚刺激が生じた場合:医師の診察/手当てを受けること。
- P337+P313:眼の刺激が続く場合:医師の診察/手当てを受けること。
- P362+P364:汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
- P305+P351+P338:眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
保管
- 追加 P403+P235:喚起の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
- P405:施錠して保管すること。
- P403+P233:換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
廃棄
- P501:内容物/容器を...に廃棄すること。
本項目の「適切な消火剤」「使ってはならない消火剤」は危険物規制別表第五の「第四類の危険物」で特定します。
「第四類の危険物」では「棒状の水」「霧状の水」「棒状の強化液」は適さないようです。これに対して「霧状の強化液」「泡」「二酸化炭素」「粉末」「乾燥砂」は良いようです。
それでは危険物として取り扱われているSDSで火災時の措置の項目を確認してみます。
キシレン
- 適切な消火剤:
- 小火災:二酸化炭素、粉末消火剤、散水、泡消火剤
- 大火災:散水、噴霧水、泡消火剤
- 使ってはならない消火剤:
- 棒状注水
- 火災時の特有の危険有害性:
- 加熱により容器が爆発するおそれがある。
- 火災によって刺激性、毒性、又は腐食性のガスを発生するおそれがある。
- 引火性液体及び蒸気。
- 特有の消火方法:
- 引火点が極めて低い:散水以外の消火剤で消火の効果がない大きな火災の場合には散水する。
- 危険でなければ火災区域から容器を移動する。
- 移動不可能な場合、容器及び周囲に散水して冷却する。
- 消火後も、大量の水を用いて十分に容器を冷却する。
- 消火活動を行う者の特別な保護具及び予防措置:
- 消火作業の際は、適切な空気呼吸器、化学用保護衣を着用する。
酢酸ブチル
- 適切な消火剤:
- 泡消火剤、粉末消火剤、炭酸ガス、乾燥砂類
- 使ってはならない消火剤:
- 棒状放水、水噴霧
- 火災時の特有の危険有害性:
- 極めて燃え易く、熱、火花、火炎で容易に発火する。
- 消火後再び発火するおそれがある。 火災時に刺激性、腐食性及び毒性のガスを発生するおそれがある。
- 特有の消火方法:
- 危険でなければ火災区域から容器を移動する。
- 容器が熱に晒されているときは、移動させない。 安全に対処できるならば着火源を除去すること。
- 消火活動を行う者の特別な保護具及び予防措置:
- 適切な空気呼吸器、防護服(耐熱性)を着用する。
厚生労働省のモデルSDSを見ると文言に統一感がありませんね。
上記の文言の中で汎用性が高いものを選択して「5.火災時の措置」を完成させましょう。
適切な消火剤
- 霧状の強化液、泡消火剤、二酸化炭素消火剤、粉末消火剤、乾燥砂
使ってはならない消火剤
- 棒状の水、霧状の水、棒状の強化液
火災時の特有の危険有害性
- 火災によって刺激性、毒性、又は腐食性のガスを発生するおそれがある。
特有の消火方法
- 危険でなければ火災区域から容器を移動する。
消火活動を行う者の特別な保護具及び予防措置
- 適切な空気呼吸器、防護服(耐熱性)を着用する。
6.漏出時の措置
必須項目は「人体に対する注意事項、保護具及び緊急時措置」「環境に対する注意事項」「封じ込め及び浄化の方法及び機材」です。
各成分のSDSを参考にしましょう。情報を集約して汎用性の高い文言を抽出します。
- 人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置:
- 関係者以外の立ち入りを禁止する。
- 作業者は適切な保護具を着用し、眼、皮膚への接触や吸入を避ける。
- 漏洩物に触れたり、その中を歩いたりしない。
- 直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
- 関係者以外の立入りを禁止する。
- 作業者は適切な保護具を着用し、眼、皮膚への接触やガスの吸入を避ける。
- 適切な防護衣を着けていないときは破損した容器あるいは漏洩物に触れてはいけない。
- 漏洩しても火災が発生していない場合、密閉性の高い、不浸透性の保護衣を着用する。
- 風上に留まる。
- 低地から離れる。
- 密閉された場所に立入る前に換気する。
- 全ての着火源を取り除く。
- 直ちに、全ての方向に適切な距離を漏洩区域として隔離する。
- 関係者以外の立入りを禁止する。
- 密閉された場所に立入る前に換気する。
- 環境に対する注意事項:
- 周辺環境に影響がある可能性があるため、製品の環境中への流出を避ける。
- 河川等に排出され、環境へ影響を起こさないように注意する。
- 環境中に放出してはならない。
- 回収、中和:少量の場合、乾燥土、砂や不燃材料で吸収し、あるいは覆って密閉できる空容器に回収する。
- 少量の場合、吸収したものを集めるとき、清潔な帯電防止工具を用いる。
- 大量の場合、盛土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いて回収する。
- 大量の場合、散水は、蒸気濃度を低下させる。しかし、密閉された場所では燃焼を抑えることが出来ないおそれがある。
- 環境中に放出してはならない。
- 封じ込め及び浄化の方法及び機材:
- 飛散した物を掃き集めるか、真空掃除機で吸引する等できるだけ飛散発じんしないようにして、空容器等に回収する。
- 取扱いや保管場所の近傍での飲食の禁止。
- 排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。
- 危険でなければ漏れを止める。
- 漏出物を取扱うとき用いる全ての設備は接地する。
- 蒸気抑制泡は蒸発濃度を低下させるために用いる。
- 回収・中和:不活性材料(例えば、乾燥砂又は土等)で流出物を吸収して、化学品廃棄容器に入れる。
- 危険でなければ漏れを止める。
- 二次災害の防止策:
- すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。
- すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。 排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。
最終的に以下のようになりました。
人体に対する注意事項、保護具及び緊急措置
- 関係者以外の立ち入りを禁止する。
- 作業者は適切な保護具を着用し、眼、皮膚への接触やガスの吸入を避ける。
- 密閉された場所に立入る前に換気する。
環境に対する注意事項
- 環境中に放出してはならない。
- 少量の場合、乾燥土、砂や不燃材料で吸収し、あるいは覆って密閉できる空容器に回収する。
- 大量の場合、盛土で囲って流出を防止し、安全な場所に導いて回収する。
封じ込め及び浄化の方法及び機材
- 排水溝、下水溝、地下室あるいは閉鎖場所への流入を防ぐ。
- 不活性材料(例えば、乾燥砂又は土等)で流出物を吸収して、化学品廃棄容器に入れる。
二次災害の防止策
- すべての発火源を速やかに取除く(近傍での喫煙、火花や火炎の禁止)。
7.取扱い及び保管上の注意
取扱い及び保管上の注意における必須項目は「取扱い」「保管」です。これらの必須項目は「必須※」と米印が付いていますので、情報がない場合は「情報なし」という記載が認められています。
「取扱い」はJIS Z 7253:2019に「技術的対策、安全取扱注意事項、接触回避などを記載する。また、必要に応じて衛生対策を記載することが望ましい。」という記載があります。
「保管」は「安全な保管条件、安全な容器包装材料を記載する。」という記載です。
この項目も手っ取り早く各成分のSDSを参考にしましょう。情報を集約して汎用性の高い文言を抽出します。
取扱い
- 技術的対策
- 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の措置を行い、必要に応じて保護具を着用する。
- 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
- 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気、全体換気を行なう。
- 『8.ばく露防止及び保護措置』に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
- 『8.ばく露防止及び保護措置』に記載の局所排気、全体換気を行う。
- 安全取扱注意事項
- 取扱い後はよく手を洗うこと。
- この製品を使用する時に、飲食又は喫煙しないこと。
- 粉じんを発生させないようにする。
- 使用前に取扱説明書を入手すること。
- すべての安全注意を読み理解するまで取扱わないこと。
- 周辺での高温物、スパーク、火気の使用を禁止する。
- 容器を転倒させ、落下させ、衝撃を加え、又は引きずるなどの取扱いをしてはならない。
- 接触、吸入又は飲み込まないこと。
- 眼に入れないこと。
- 取扱い後はよく手を洗うこと。
- 屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
- この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
- 環境への放出を避けること。
- 取扱い後はよく手を洗うこと。
- この製品を使用する時に、飲食または喫煙をしないこと。
- 消防法の規制に従う。
- ミスト、蒸気、スプレーを吸入しないこと。
- 屋外または換気の良い場所でのみ使用すること。
- 皮膚と接触しないこと。
- 眼に入れないこと。
- 接触回避
- 「10.安定性及び反応性」を参照。
- 『10.安定性及び反応性』を参照。
- 衛生対策
- この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
- 取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
- 安全な保管条件
- 直射日光を避け、冷暗所に保管する。
- 保管場所は壁、柱、床を耐火構造とし、かつ、はりを不燃材料で作ること。
- 保管場所は屋根を不燃材料で作るとともに、金属板その他の軽量な不燃材料でふき、かつ天井を設けないこと。
- 保管場所の床は、床面に水が浸入し、又は浸透しない構造とすること。
- 保管場所の床は、危険物が浸透しない構造とするとともに、適切な傾斜をつけ、かつ、適切なためますを設けること。
- 保管場所には危険物を貯蔵し、又は取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設ける。
- 熱、火花、裸火のような着火源から離して保管すること。-禁煙。
- 酸化剤から離して保管する。
- 容器は直射日光や火気を避けること。
- 容器を密閉して換気の良い冷所で保管すること。
- 施錠して保管すること。
- 消防法の規制に従う。
- 容器を密閉して冷乾所にて保存すること。
- 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
- 施錠して保管すること。 消防法の規制に従う。
- 安全な容器包装材料
- 破損や漏れの無い密閉可能な容器を使用する。
- 消防法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。
最終的に以下のようになりました。
取扱い
- 技術的対策
- 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の設備対策を行い、保護具を着用する。
- 「8.ばく露防止及び保護措置」に記載の局所排気、全体換気を行なう。
- 安全取扱注意事項
- 環境への放出を避けること。
- 屋外又は換気の良い区域でのみ使用すること。
- 周辺での高温物、スパーク、火気の使用を禁止する。
- 接触、吸入又は飲み込まないこと。
- 眼に入れないこと。
- 皮膚と接触しないこと。
- 接触回避
- 「10.安定性及び反応性」を参照。
- 衛生対策
- この製品を使用する時に、飲食又は喫煙をしないこと。
- 取扱い後はよく手を洗うこと。
保管
- 安全な保管条件
- 容器は直射日光や火気を避けること。
- 容器を密閉して換気の良い冷所で保管すること。
- 熱、火花、裸火のような着火源から離して保管すること。-禁煙。
- 酸化剤から離して保管する。
- 消防法の規制に従う。
- 施錠して保管すること。
- 安全な容器包装材料
- 破損や漏れの無い密閉可能な容器を使用する。
- 消防法及び国連輸送法規で規定されている容器を使用する。
8.ばく露防止及び保護措置
ばく露防止及び保護措置の必須項目は「保護具」だけなのですが、危険有害物質を含有するSDSの場合は管理濃度及び許容濃度も記載することになります。
日本産業衛生学会、ACGIH(米国産業衛生専門家会議)という機関の数値を使用することが多いですね。
詳しくは顔料と化学物質管理の「項目8 ばく露防止及び保護措置(管理濃度、許容濃度)」を御覧ください。
基本は各成分のSDSを確認することです。あとはNITE-CHRIPで検索しても良いでしょう。
日本産業衛生学会は許容濃度等の勧告(2022年度)、ACGIHの許容濃度は英語の本を購入しないと確認できませんが、サイト検索で作業環境測定対象物質の管理濃度・許容濃度等一覧 なども参照できますね。
これらの情報を表にまとめます。
化学物質の名称 | 管理濃度 | 日本産業衛生学会(許容濃度) | ACGIH(TLV-TWA) |
二酸化チタン | 未設定 | (吸入性粉じん) 1.5mg/m3、(総粉じん) 2mg/m3※1 | 10mg/m3 |
キシレン | 50ppm | 50ppm、217mg/m3 | 100ppm |
酢酸ブチル | 150ppm | 100ppm | 150ppm※2 |
※1:SDSでは(吸入性粉じん) 1mg/m3、(総粉じん) 4mg/m3ですが2022年度の勧告値は表の通りです。
※2:SDSには記載がありませんが「作業環境測定対象物質の管理濃度・許容濃度等一覧」ではACGIHの数値は150ppmとなっています。
管理濃度や許容濃度は任意項目ですが、化学物質のリスクアセスメントで曝露量の算定に使用しますから、SDSに記載する方が良いと思います。
任意項目の「設備対策」についても「7.取扱い及び保管上の注意」で項目8を参照するように記載していますから、局所排気装置などの設備について記載する必要があります。成分SDSから必要な文言を抽出します。
設備対策
- 粉じんが発生する作業所においては、必ず密閉された装置、機器または局所換気装置を使用する。
- 適切な防爆の電気・換気・照明機器を使用すること。
- 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
- この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
- 空気中の濃度をばく露限度以下に保つために排気用の換気を行なうこと。
- 高熱工程でミストが発生するときは、空気汚染物質を管理濃度以下に保つために換気装置を設置する。
- この物質を貯蔵ないし取扱う作業場には洗眼器と安全シャワーを設置すること。
- 作業場には全体換気装置、局所排気装置を設置すること。
- 消防法の規制に従う。
次に必須項目の「保護具」について考えてみましょう。
カッコ書きに「呼吸用保護具、手の保護具、眼・顔面の保護具、皮膚及び身体の保護具」とありますから、これら4つの保護具について記載することになります。
危険有害性物質に保護具は必須になりますから全ての項目に「適切な保護具を着用すること。」と記載することになるでしょう。
保護具
- 呼吸用保護具
- 粉じんが発生する場合、必要に応じて保護マスクや呼吸用保護具を着用する。
- 適切な呼吸器保護具を着用すること。
- 手の保護具
- 手に接触する恐れがある場合、保護手袋を着用する。
- 適切な保護手袋を着用すること。
- 眼、顔面の保護具
- 眼に入る恐れがある場合、保護眼鏡やゴーグルを着用する。
- 適切な眼の保護具を着用すること。
- 保護眼鏡(普通眼鏡型、側板付き普通眼鏡型、ゴーグル型)
- 適切な顔面用の保護具を着用すること。
- 皮膚及び身体の保護具
- 必要に応じて保護衣、保護エプロン等を着用する。
- 適切な保護衣を着用すること。
「適切な保護具」とはどのような保護具でしょうか?
以下に保護具の通達がありますのでご参照ください。
- 防じんマスク及び防毒マスク:「令和5年5月25日、基発0525第3号」
- 保護手袋:「平成29年1月12日、基発0112第6号」
- 眼・皮膚等の保護具:「平成15年8月11日、基発第0811001号」
最終的に項目8は以下のようになりました。
化学物質の名称 | 管理濃度 | 日本産業衛生学会(許容濃度) | ACGIH(TLV-TWA) |
二酸化チタン | 未設定 | (吸入性粉じん) 1.5mg/m3、(総粉じん) 2mg/m3 | 10mg/m3 |
キシレン | 50ppm | 50ppm、217mg/m3 | 100ppm |
酢酸ブチル | 150ppm | 100ppm | 150ppm |
設備対策
- 適切な防爆の電気・換気・照明機器を使用すること。
- 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
- 作業場には全体換気装置、局所排気装置を設置すること。
- 消防法の規制に従う。
保護具
- 呼吸用保護具
- 適切な呼吸器保護具を着用すること。
- 手の保護具
- 適切な保護手袋を着用すること。
- 眼、顔面の保護具
- 適切な眼の保護具を着用すること。
- 適切な顔面用の保護具を着用すること。
- 皮膚及び身体の保護具
- 適切な保護衣を着用すること。
9.物理的及び化学的性質
項目9は「その他のデータ」以外全て必須項目となっています。ただし物理状態、色以外の項目は、「情報なし」という記載が認められています。
物理状態(気体・液体・固体)、色、臭いについては、問題なく記載できるでしょう。
「JIS Z 7253:2019」の記載に「融点/凝固点、溶解度、n-オクタノール/水分配係数(log値)について混合物については記載しなくて良い。」とありますから、遠慮なく記載しない方針で進めましょう。
可燃性は引火性液体とし、引火点は酢酸ブチルの引火点を採用しているので記載することにしました。
物理的状態
- 物理状態:液体
- 色:白色
- 臭い:有機溶剤臭
可燃性:引火性液体
引火点:22℃(酢酸ブチル)
それ以外の項目は、各成分の情報を記載することになります。
成分 | 融点 | 爆発範囲等 | 引火点 | 自然発火点 | 分解温度 | pH | 動粘性率 | 蒸気圧 | 密度 | 相対ガス密度 | 粒子特性 |
Pig. | 1855℃ | 情報なし | 情報なし | 不燃性 | 1860℃ | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 4.23 | 情報なし | 情報なし |
Reg. | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 非該当 |
Sol.1 | 情報なし | 情報なし | 28℃ (参考値) | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | ≦1 | ≧1 | 非該当 |
Sol.2 | -78℃ | 1.2~7.6vol% | 22℃ | 425℃ | 情報なし | 7 | 0.732mPa・s | 1.2kPa (20℃) | 0.9 | 4.0 (空気=1) | 非該当 |
Pig.:二酸化チタン、Reg.:アクリル樹脂、Sol.1:キシレン(混合)、Sol.2:酢酸ブチル
※キシレンは異性体やエチルベンゼンが含有しており、混合物情報が不足している。
理的状態
- 物理状態:液体
- 色:白色
- 臭い:有機溶剤臭
可燃性:引火性液体
引火点:22℃(酢酸ブチル
成分 | 融点 | 爆発範囲等 | 引火点 | 自然発火点 | 分解温度 | pH | 動粘性率 | 蒸気圧 | 密度 | 相対ガス密度 | 粒子特性 |
Pig. | 1855℃ | 情報なし | 情報なし | 不燃性 | 1860℃ | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 4.23 | 情報なし | 情報なし |
Reg. | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 非該当 |
Sol.1 | 情報なし | 情報なし | 28℃ (参考値) | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | 情報なし | ≦1 | ≧1 | 非該当 |
Sol.2 | -78℃ | 1.2~7.6vol% | 22℃ | 425℃ | 情報なし | 7 | 0.732mPa・s | 1.2kPa (20℃) | 0.9 | 4.0 (空気=1) | 非該当 |
Pig.:二酸化チタン、Reg.:アクリル樹脂、Sol.1:キシレン(混合)、Sol.2:酢酸ブチル
10.安定性及び反応性
項目10は全て必須項目ですが、全て「情報なし」という記載が認められています。
経験上、成分SDSの文言をそのまま記載することが多い項目となります。
反応性
- 通常の取扱い条件下では安定である。
- 通常の取扱いにおいては安定である。
- 法規制に従った保管及び取扱においては安定と考えられる
化学的安定性
- 通常の取扱い条件下では安定である。
- 通常の取扱いにおいては安定である。
- 法規制に従った保管及び取扱においては安定と考えられる
危険有害反応可能性
- 通常の取扱い条件下では危険有害反応を起こさない。
- 通常の条件では、危険有害な反応は起こらない。
- 強酸剤と激しく反応し、火災や爆発の危険をもたらす。
- 強力な酸化剤、強酸、強塩基と反応し、火災や爆発の危険をもたらす。
- 多くのプラスチックやゴムを侵す。22℃以上では、蒸気/空気の爆発性混合気体を生じることがある。
避けるべき条件
- 直射日光を避け、冷暗所に保管する。
- 加熱。
- 22℃以上
混触危険物質
- 酸化剤、還元剤等
- 酸化剤。
- 酸化剤、強酸、強塩基、プラスチック、ゴム
危険有害な分解生成物
- 火災等の場合は、毒性の強い分解生成物が発生する可能性がある。
- 加熱分解により一酸化炭素、ニ酸化炭素を生じる。
- 蒸気/空気の爆発性混合気体
反応性
- 通常の取扱い条件下では安定である。
化学的安定性
- 通常の取扱い条件下では安定である。
危険有害反応可能性
- 強力な酸化剤、強酸、強塩基と反応し、火災や爆発の危険をもたらす。
避けるべき条件
- 直射日光を避け、冷暗所に保管する。
混触危険物質
- 酸化剤、還元剤、強酸、強塩基等
危険有害な分解生成物
- 加熱分解により一酸化炭素、ニ酸化炭素を生じる。
- 蒸気/空気の爆発性混合気体
11.有害性情報
項目11も全て必須項目ですが、全て「情報なし」という記載が認められています。
「JIS Z 7253:2019」の記載では「混合物の場合、・・・、混合物としての毒性情報とGHS分類とを記載する。混合物全体として試験されていない場合、又は評価するにたる情報が得られない場合は成分についての毒性情報とGHS分類とを記載する。」とあります。
つまり各成分における健康有害性のGHS分類を記載するだけの話ですね。
各成分のGHS分類はSDS情報だけでは少々足りないので、NITE-Gmiccsで「政府によるGHS分類結果」をダウンロードして確認してみましょう。
製品としての有害性情報:情報なし
成分 | 急性毒性経口mg/kg | 急性毒性経皮mg/kg | 急性毒性吸入:気体ppmV | 急性毒性吸入:蒸気mg/l | 急性毒性吸入:粉塵、ミストmg/l | 皮膚腐食性/刺激性 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 |
Pig. | 区分に該当しない | 分類できない | 区分に該当しない | 区分に該当しない | 分類できない | 区分に該当しない | 区分に該当しない |
Reg. | 分類できない | 分類できない | 分類できない | 分類できない | 分類できない | 分類できない | 分類できない |
Sol.1 | 区分に該当しない | 区分4 | 区分に該当しない | 区分4 | 分類できない | 区分2 | 区分2 |
Sol.2 | 区分に該当しない | 区分に該当しない | 区分に該当しない | 分類できない | 分類できない | 区分に該当しない | 区分2B |
成分 | 呼吸器感作性又は皮膚感作性 | 生殖細胞変異原性 | 発がん性 | 生殖毒性 | 特定標的臓器・全身毒性(単回ばく露) | 特定標的臓器・全身毒性(反復ばく露) | 誤えん有害性 |
Pig. | 分類できない | 分類できない | 区分2 | 分類できない | 分類できない | 区分1(呼吸器) | 分類できない |
Reg. | 分類できない | 分類できない | 分類できない | 分類できない | 分類できない | 分類できない | 分類できない |
Sol.1 | 分類できない | 分類できない | 分類できない | 区分1B | 区分1(中枢神経系、呼吸器、肝臓、腎臓) 区分3(麻酔作用) | 区分1(神経系、呼吸器、) | 区分1 |
Sol.2 | 分類できない | 分類できない | 分類できない | 分類できない | 区分3(気道刺激性、麻酔作用) | 分類できない | 分類できない |
12.環境影響情報
項目12も全て必須項目ですが、全て「情報なし」という記載が認められています。
「JIS Z 7253:2019」では「入手可能で適切である場合には、混合物中の該当する各成分について情報を提供する。」と記載しています。
項目11と同様にダウンロードした各成分のGHS分類を記載しましょう。
製品としての環境影響情報:情報なし
成分 | 水生環境有害性 短期(急性) | 水生環境有害性 長期(慢性) | オゾン層への有害性 |
Pig. | 分類できない | 分類できない | 分類できない |
Reg. | 分類できない | 分類できない | 分類できない |
Sol.1 | 区分2 | 区分2 | 分類できない |
Sol.2 | 区分3 | 区分に該当しない | 分類できない |
Pig.:二酸化チタン、Reg.:アクリル
13.廃棄上の注意
項目13は必須項目で「化学品(残余廃棄物)、当該化学品が付着している汚染容器及び包装の安全で、かつ、環境上望ましい廃棄、又はリサイクルに関する情報」(JIS Z 7253:2019)と記載があります。
「残余廃棄物」と「汚染容器及び包装」について記載すれば良いようです。
今までのように成分SDSから文言を抽出してみましょう。
残余廃棄物
- 廃棄においては、関連法規制ならびに地方自治体の基準に従うこと。
- 都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、または地方公共団体が廃棄物処理を行っている場合はそこに委託して処理する。
汚染容器及び包装
- 容器は洗浄してリサイクルするか、関連法規制ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。
- 空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。
14.輸送上の注意
輸送上の注意は、国連番号等に該当する場合に記載が必要な項目です。
「国内規制がある場合の規制情報」は必須項目となります。SDSの作り方1で紹介したSDSテンプレート例を見てみると記載項目は以下のとおりです。
国際規制
- 国連番号
- 品名(国連輸送名)
- 国連分類(輸送における危険有害性クラス)
- 副次危険
- 容器等級
- 海洋汚染物質
- MARPOL73/78附属書Ⅱ及びIBCコードによるばら積み輸送される液体物質
- その他の安全対策
国内規制
- 海上規制情報
- 航空規制情報
- 陸上規制情報
特別な安全上の対策
その他 (一般的) 注意
緊急時応急措置指針番号
順に見ていきましょう。
国連番号関連は「危険物輸送に関する勧告(モデル規則:オレンジブック)」を確認すると良いでしょう。
詳しい解説は「独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所」の国連危険物輸送勧告(TDG)というページを見ると良いですね。
「白色アクリル塗料」は引火性液体であり引火点は22℃としてこれまでSDSを作成してきました。
オレンジブックを見ると引火性液体はクラス3に該当します。
クラス3-引火性液体の項目を見ると「2.3.2.6 引火性に基づく危険性グループ」に以下の表があります。
容器等級 | 引火点(密閉式) | 初留点 |
I | — | ≦35℃ |
II | <23℃ | >35℃ |
III | ≧23℃≦60℃ | >35℃ |
危険物判定は酢酸ブチルのデータを基に考えていますから、成分SDSより引火点は22℃、初留点は126.1℃という数字を確認します。
容器等級は「II」ということになりますね。
「第3.2章 危険物リスト」の表を見ると「国連番号1263」に「塗料又は塗料関連物質」(国連輸送名)があります。
副次的危険性の項目は空欄ですね。
海洋汚染物質は海洋汚染防止法で定められています。
「船舶による危険物の運送基準等を定める告示」の93ページから始まる表(別表第一)をよく見てみると、化学物質の右肩に小さく「P」の文字が付与されている物質を確認できます。
例えば国連番号0076の「ジニトロフェノール」の右肩にありますね。このような物質は「P」が付与されているので「P物質(=海洋汚染物質)」といいます。キシレンと酢酸ブチルを検索すると「P」の記載はありませんでした。
MARPOL73/78とは、1978年の議定書により修正された1973年海洋汚染防止条約のことです。MARPOL条約附属書ⅡやIBCコードの資料は国土交通省のサイトにありました。
より分かりやすい説明は環境省の「有害液体物質について」を見ると良いですね。
資料を確認するとキシレン、酢酸ブチルともに有害液体物質のY類物質に該当するようですね。
その他の安全対策について今回は記載する情報がありません。
国内規則は危険物に該当しない場合はその旨を、該当する場合は船舶安全法、航空法、消防法の規定に従うと記載すれば良いでしょう。
特別な安全上の対策は、イエローカードについて記載すれば良いと思います。
イエローカードは、危険物の陸上輸送時に携行する「緊急連絡先カード」のことです。
一般社団法人日本化学工業協会が推進しており、万一事故となった場合の応急措置や緊急連絡先が記載されています。
その他 (一般的) 注意について今回は記載する情報がありません。
緊急時応急措置指針番号は「一般社団法人 日本化学工業協会」の「ERG2016版 緊急時応急措置指針―容器イエローカード(ラベル方式)への適用―」という本を見ると良いのですが、有料ですので英語の文献「ERG2020 (English)」をダウンロードすると無料で確認できます。
「ERG2020 (English)」の34ページに国連番号1263に該当する指針番号128とあります。英語ですがコピーできますので、Google翻訳で内容を確認できます。
結果を以下にまとめます。
国際規制
- 国連番号:1263
- 品名:塗料又は塗料関連物質
- 国連分類:クラス3
- 副次危険:-
- 容器等級:II
- 海洋汚染物質:該当しない
- MARPOL73/78附属書Ⅱ及び
- IBCコードによるばら積み輸送される液体物質:Y類物質含有
- その他の安全対策:-
国内規制
- 海上規制情報:船舶安全法の規定に従う。
- 航空規制情報:航空法の規定に従う。
- 陸上規制情報:消防法の規制に従う。
特別な安全上の対策:移送時にイエローカードの保持が必要。
その他 (一般的) 注意:-
緊急時応急措置指針番号:128
15.適用法令
適用法令は必須項目です。
今まで出てきた法令を列挙していきます。
労働安全衛生法
化学物質排出把握管理促進法
船舶安全法
航空法
消防法
廃棄物の処理及び清掃に関する法律
毒劇法についてはキシレンが劇物ですが、白色アクリル塗料は混合物になっています。つまり、毒劇法上は「キシレンを含有する製剤」であるといえます。
毒劇法の劇物においてキシレンは製剤ではないものが規制対象となっていますので、混合物たる製品としては、毒劇法上の劇物に該当しません。
16.その他の情報
項目16では参考資料、免責事項などを記載すれば良いでしょう。
参考資料
- JIS Z 7252:2019「GHSに基づく化学品の分類方法」
- JIS Z 7253:2019「GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法-ラベル、作業場内の表示及び安全データシート(SDS)」
- 職場の安全サイト 安全データシート 酸化チタン、キシレン、酢酸ブチル
- 国連GHS文書改訂第6版(2015年)の仮訳(経済産業省)
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)SDSテンプレート例
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)NITE-Gmiccs
- 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)NITE-CHRIP
- 初田防災設備株式会社 危険物政令別表第五
- 作業環境測定対象物質の管理濃度・許容濃度等一覧(厚生労働省)
- 日本産業衛生学会 許容濃度等の勧告(2022年度)
- ACGIH TLV-TWA
- 適切な保護具(厚生労働省)
- 独立行政法人労働者健康安全機構 国連危険物輸送勧告(TDG)
- 船舶による危険物の運送基準等を定める告示(国土交通省)
- MARPOL条約附属書Ⅱ、IBCコード(国土交通省)
- 有害液体物質について(環境省)
- 一般社団法人日本化学工業協会 イエローカード
- Pipeline and Hazardous Materials Safety Administration (PHMSA) ERG2020 (English)
免責事項
本SDSの記載内容は発行時点で入手できる資料、情報、データに基づいて作成しており、日本国内法令の改正や新しい知見により改訂されることがあります。情報伝達を目的としており、記載内容を保証するものではありません。
本製品は、一般工業用途向けに開発、製造されたものです。安全面での配慮を必要とする用途への使用に際しては、貴社にて事前に当該用途での安全性を十分にご確認の上、使用の可否をご判断ください。